KENWOOD KT-3030 (2号機)

KENWOOD KT-3030 (2号機) が到着

2022年12月11日、埼玉県草加市の Y さんより KENWOOD KT-3030 の修理依頼品が到着しました。

定価12万円の高級 FM 専用チューナ です。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 電源 ON して動作チェック

  4. カバーを開けてチェック



リペア

  1. 音の強弱に合わせてパチパチという雑音が乗る

    1. 現象確認と切り分け

      • [MULTIPATH] の [H] 端子には検波出力がそのまま出ています。 ここで音を聴くと雑音があることを確認しました。

      • そうすると、原因は [フロントエンド] [IF 部] [PLL 検波部] のどこかにあることになります。 [MPX] 以降は問題なさそうです。

      • ほとんど正常で雑音だけが時々出るという現象の対策は時間と手間がかかるのです。

      • ブロックごとにバッサバッサと部品を交換してみるのが一番早いです。

    2. FM フロントエンドの [トリマコンデンサ] を全数交換してみました。

      • 通常、ガサゴソという雑音は OSC のトリマコンデンサ故障のことがほとんどです。

      • 本機は製造から40年近く経っているので、いずれにしても交換するほうがよいです。

      • トリマコンデンサ×6個を右の写真の 10pF に交換しました。

      • 同時にバリキャップ [KV1320] も取り外して確認しましたが、異常はなかったので元に戻しました。

      • 同時に FM フロントエンド全体の半田付けを補修しました。

        • ハンダが劣化して泡状になっているのとダンゴハンダが多数見られたからです。

        • 右の写真はその例ですが、ハンダが盛り上がってダンゴになっています。 明らかにハンダクラック気味です。

        • こうなっているのは FM フロントエンドの部分だけで、その他の部分は大丈夫でした。

        • 推定ですが、FM フロントエンドは基板の右端にあり、製造時に基板をハンダ層に流す時にフラックスが左右で均一ではなかったのが原因のような気がします。 製造時の問題でしょう。 右側のフラックスが多過ぎたか。

        • ハンダ付け部分の古いハンダを吸い取り、新しいハンダを流し込むという作業を何百点も実施したので、膨大な時間がかかりました。

      • 結果、少しマシにはなった感じがするが現象は変わりませんでした。

    3. IF 部の FET とトランジスタを全数交換してみました。

      • 本機の IF 部は完全ディスクリート構成となっており、[FET]×2本、[トランジスタ]×20本 使われています。

      • 全て同型の右の写真の [2SK125] [2SC1923] を使って一斉交換しました。

      • 結果、少しマシにはなった感じがするが現象は変わりませんでした。

    4. PLL 検波部の FET とバリキャップを全数交換してみました。

      • 本機の PLL 検波部は完全ディスクリート構成となっており、[FET]×2本、[バリキャップ]×1本 使われています。

      • FET は [2SK161]→[2SK192A] に交換しました。 バリキャップには同型の [KV226] を使って交換しました。 右の写真です。

      • 結果、パチパチという雑音が消えました。 原因は PLL 検波部にあったようです。

      • ところが、40dBf 以下の若干弱い電波レベルでザッザー・バリバリという雑音が出るようになりました。

        • どうやら、今まではパチパチ雑音に隠れて目立たなかったと思います。 今度は、これを直さないといけないです。

  2. 40dBf 以下の若干弱い電波レベルでザッザー・バリバリという雑音が出る

  3. 感度が低下している

  4. [LEVEL ボリューム] のレベル最大位置で音が途切れることがある

  5. タクトスイッチが劣化している

  6. リアパネルの端子類のハンダクラック予防対策



再調整

  1. 電源電圧チェッック (VP)

    VP 標準値 実測値 判定 備考
    チューナ基板 CN1-1pin -12V -12.0V OP アンプ
    チューナ基板 CN1-2pin +12V +11.8V チューナ全般
    チューナ基板 CN1-3pin +15V +15.5V MPX
    チューナ基板 CN1-5pin +5.6V +5.62V MCU
    チューナ基板 CN1-7pin +54V +54.6V VT 回路 (+B)

  2. 調整結果

    項目 IF Band stereo/mono L R 単位
    ステレオセパレーション (1kHz) Super Wide stereo 70 64 dB
    Wide 56 58 dB
    Narrow 55 52 dB
    Super Narrow 49 50 dB
    高調波歪率 (1kHz) Super Wide mono 0.02 %
    stereo 0.03 %
    パイロット信号キャリアリーク Super Wide stereo -66 -69 dB
    オーディオ出力レベル偏差 Super Wide mono 0 +0.12 dB
    REC CAL Super Wide mono 398.4 Hz
    -7.2 -7.2 dB



使ってみました

  1. 今回の修理は非常に疲れました

  2. 感度と音質