KENWOOD KT-5020 (2号機) をゲット!
2010年4月3日、ヤフオクで PLL シンセサイザー FM/AM チューナー
KENWOOD KT-5020
の故障品を
100円
で入手しました。
出品者のコメントは以下です
- 受信 … FM/AM 共受信致しました。
- 音声 … 出力しましたが音声が歪んで出力されます。
- 外観 … 全面パネル部分は細かいキズはありますが目立つ大きなキズはありません。天板にゴム足の跡が4ヶ所あります。
状態チェック
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外観
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全体的に綺麗です。
フロントパネルやリアパネルに目立つキズがなく、かなり綺麗です。
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天板も綺麗ですが、この上に乗っていた機器のゴム足の跡が4ヶ所あります。
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天板とフロントパネルが接する左右の上側に若干曲がりがありますが、これは補修できる程度です。
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動作
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FM 受信で常時「ガソゴソ」という雑音が入ります。
出品者のいう「音声が歪んで出力」とは違います。
これ以外の動作は正常でステレオにもなります。
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AM 受信は問題ないです。
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FL 管の輝度は少し薄くなり始めていますが、まだまだ使えます。
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ボタンなどの操作は良好です。
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プリセットメモリの記憶保持は良好です。
リペア
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修理 ・・・ FM 受信時にガソゴソ雑音が入る
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AM 受信ではガソゴソ雑音は入りません。
こうなると電源の要因は少ないのですが、一応チェックしてみました。
以下のように特に問題ないです。
測定ポイント |
標準値 |
実測値 |
判定 |
IC27 OUT |
+5.6V |
+5.65V |
○ |
Q25-E |
+13V |
+12.93V |
○ |
Q26-E |
+5V |
+5.18V |
○ |
Q27-E |
+26V |
+27.06V |
○ |
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どこで雑音が発生しているか切り分け調査しました
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TP10 (AF OUT) の PLL 検波出力には雑音が乗っていない。
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MPX 入力では雑音が乗っている。
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「PLL 検波」と「MPX」の間には右の回路が入っています。
これが発生場所に違いありません。
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IC9-1pin 出力には雑音が乗っておらず、この後ろにある R105 2.2kΩ の L23 側には雑音が乗っています。
こうなると L23 が故障部品と判断できます。
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更に、IC9-1pin の電圧が 5.55V に対し、R105 2.2kΩ の L23 側の電圧は 3V 程度でフラフラしています。
この電圧も本来なら 5.55V でないとオカシイです。
これが雑音です。
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L23 の故障モードとしては、内蔵コンデンサが腐食劣化して絶縁破壊していると推定します。
本来あってはならない L23 のグランド側への導通がランダムに発生して、これが雑音源になっているのです。
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仮対策として、L23 への配線を取り外し、R105 2.2KΩ〜R106 22KΩ を直接接続しました。
すなわち、L23 をバイパスしたのです。
これで、ガサゴソ雑音はピタリと止まりました。
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L23 は何のためのフィルタでしょう?
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L23 は LC 型で3ポールのフィルタとなっています。
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間違いなく SCA チャンネルに対するフィルタです。
SCA チャンネル成分をカットしています。
SCA チャンネルで FM 本来の音声にビート障害を発生させることがあり、これの防止です。
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SCM チャンネルなどの周波数スペクトラムについては右の図を参照ください。
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L23 で 57kHz をカットオフ周波数として、これ以上の周波数成分を急峻にカットしていると思います。
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FM 放送では、SCA チャンネルで「VICS 情報 (NHK のみ)」「見えるラジオ」のサービスを行っています。
ところが、「見えるラジオ」サービスはほぼ中止になった現在、SCA フィルタはなくても大丈夫になってきています。
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L23 のようなフィルタが入っているのは Kenwood/TRiO でも KT-770 (1983年), KT-1010 (1983年), KT-1010U(1984年), KT-747 (1985年), KT-5020 (1989年) だけで、その他のチューナーには入っていません。
- おそらく KT-5020 は KT-770 の焼き直し設計ではないのか。
- それで SCA フィルタが同じように入ったのだろう。
- ですから、L23 がなくても全然問題ないのではないか ・・・
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以上より、L23 バイパスを仮対策としましたが、このままで大丈夫そうです。
仮対策のままとします。
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クリーニング
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全体を [リンレイ マルチクリーナ D413] でクリーニングしました。
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天板の左右上の若干曲がりは、ペンチで補正しました。
再調整結果
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調整の仕方は
KT-5020 (1号機)
のページの記載通りです。
従って、ここでは調整結果だけを掲載します。
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FM 同調点検出部のズレがかなりありました。
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再調整により、感度およびステレオセパレーションが向上し、以下の数値になりました。
L23 バイパスの影響はないようです。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
54 |
52 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
25 |
25 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-65 |
-70 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
WIDE |
0 |
-0.03 |
dB |
使ってみました
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KT-5020 はこれで2台目の再調整ですが、やはり良いチューナーです。
音が良いです。
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感度も申し分ありません。