Pioneer TX-8900U (2号機) が到着
2023年4月26日、千葉県柏市の T さんより
Pioneer TX-8900U
の修理依頼品が到着しました。
写真は
照明完全 LED 化
後です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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[STEREO] ランプが点かず、モノラル状態と思われます。
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修理可能なら、照明の LED 化をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [WH1006102M] で、電源コードよりは製造年が判明しませんでした。
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フロントパネルなどはとても綺麗な逸品で、ビンテージ物としては奇跡的な綺麗さです。
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リアパネルの端子類に輝きがあります。
天板に少しスレがあります。
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電源 ON してチェック
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電源 ON でき、[同調ノブ] [各種ノブ] [各種ツマミ] [各種レバー] は正常に動作します。
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FM 受信
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S メータと T メータは正常に振れます。
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[STEREO] ランプが点灯せず、音もモノラルです。
[WIDE] ランプが切れています。
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AM 受信
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正常に受信できます。
音は左右チャンネルから正常に出ます。
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カバーを開けてチェック
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使用 IC のロット番号より、この TX-8900Uは [1976年製造品] とわかりました。
半世紀物ビンテージです。
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チューナ基板で [HA1197]、MPX 基板で [PA1001A] が IC ソケット化して交換されています。
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チューナ基板の裏側で [T12] [T15] にセラミックコンデンサが多数不細工に取り付けられています。
リペア
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FM 受信時に [STEREO] ランプが点灯せず、音もモノラルで出ている
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まずは、[STEREO] ランプが切れていました。
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ランプの代わりに DMM (電圧計) をつないでチェックしましたが、やはりステレオにならないようです。
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MPX 基板にある VCO 調整用 [VR1] を仮調整したらステレオになりました。
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ランプの代わりにつないだ DMM は 12V を示したので、間違いなくステレオになっています。
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ランプ切れは LED 化するのでこの時点では放置ですが、ステレオにならない不具合は直りました。
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チューナ基板の裏側で [T12] にセラミックコンデンサが多数不細工に取り付けられている
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[T12] は FM 同調点検出用の IFT です。
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[T12] が故障し、内部のチタコンを取り外し、代わりにセラミックコンデンサを多数外付けして修理したのでしょう。
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5個のセラミックコンデンサを並列にして
33pF+22pF+22pF+15pF+8pF=100pF
としています。
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対策としては容量 100pF で正しいですが、こんなに付けたら不細工です。
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5個のセラミックコンデンサを外し、100pF 温度補償積層セラミックコンデンサに交換して手直ししました。
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チューナ基板の裏側で [T15] にセラミックコンデンサが多数不細工に取り付けられている
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[T15] は AM IF 抽出用の IFT です。
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[T15] が故障し、内部のチタコンを取り外し、代わりにセラミックコンデンサを多数外付けして修理したのでしょう。
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3個のセラミックコンデンサを並列にして
100pF+82pF+15pF=197pF
としています。
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ここは、容量 180pF が正しいです。
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対策としては3個のセラミックコンデンサを外し、100pF+82pF 温度補償積層セラミックコンデンサに交換して手直ししました。
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完全 LED 化 ・・・ 修理依頼者からの要望
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基本的には
TX-8900U (1号機)
と同じ方法で LED 化しました。
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インディケータランプ
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右の回路でランプと置き換えました。
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使用 LED は [3mm 砲弾型 / スモーク白色 / 1560mcd / 照射角 70度] です。
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ダイヤルスケールランプと [POWER] ランプ
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下の回路でランプと置き換えました。
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ダイヤルスケール照明には T10 ウェッジ LED 球を4個使いました。
1個に高輝度 LED を15個内蔵しています。
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[POWER} 照明の LED はインディケータ用と同じです。
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LED 化完成しました!
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朽ち果てそうな黄昏の橙色から現代的なホワイト基調になりました。
イイ感じです。
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[WIDE] [STEREO] ランプ切れも同時に直りました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
電源基板 3pin |
+13V |
+13.1V |
〇 |
電源基板 6pin |
+12.4V |
+12.5V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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ダイヤル指針と受信周波数がほぼ合うようトラッキング調整できました。
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ステレオで聴けるようになって、音質がグンと上がりました。
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ステレオセパレーションなどは以下となりました。
良い数値です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
50 |
49 |
dB |
NARROW |
40 |
42 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.026 |
% |
stereo |
0.026 |
% |
NARROW |
mono |
0.17 |
% |
stereo |
0.17 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-105 |
-94 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.19 |
dB |
REC LEVEL CHECK 信号 |
WIDE |
mono |
421.9 |
Hz |
-6.0 |
dB |
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AM 受信
使ってみました
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デザイン
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贅沢な作りで高級感あります。
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ダイヤル指針やダイヤルスケールが腕時計の文字盤ような仕上げで素敵です。
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今回、照明 LED 化したのでスッキリ爽やかなフロントパネルです。
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ドッシリとして重厚な安定感がありますが、アンプ並みの大きさと重さです。
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性能・音質
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FM 受信性能は優秀です。
動作に確実性があり、安心して使えます。
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FM の音は一聴してハッとするような高音質です。
これが PBLD の音でしょう。
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AM 受信性能は良く、音質も一般のチューナよりはイイです。
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デザイン・性能・音質ともに満足できる
優秀機
です。