SONY ST-S333ESA (7号機) が到着
2023年1月22日、大阪府吹田市の O さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
夏場室内温度が高ければ、受信感度少し悪いのですが受信できます。
冬場は相当時間経てば受信感度は安定してきます。
-
電源部の電解コンデンサ 1000μF/63V の足元何かが漏れているような (硬化していますが)。
-
以前、プリセット用のコンデンサは取り替えました。
また、アンテナ端子の接続半田もリペアしました。
-
要交換部品は交換いただいて結構です。
点検調整修理をお願いします。
-
外観
-
製造シリアル番号は [200897] で、電源コードの製造マーキングより1991年製と判明しました。
-
純正 AM ループアンテナは添付されていませんでした。
-
フロントパネル、側板、リアパネル、天板、底板は全て綺麗な逸品です。
リアパネルの端子類は綺麗です。
-
電源 ON にてチェック
-
電源は問題なく入り、ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
各ボタンやノブはちゃんと反応します。
-
FM 受信
-
FM は大きく感度低下しており、S メータは少ししか振れません。
-
こういう状況ですが、なんとか受信でき、[STEREO] 表示も点灯します。
-
AM 受信
リペア
-
FM の感度が大きく低下している
-
原因は RF 同調用トリマコンデンサの劣化です。
-
3個あるトリマコンデンサの内 CT103 が完全に故障、残りの2個も劣化しています。
-
3個とも右の写真の 10PF セラミックトリマコンデンサに交換しました。
-
感度が上がってから気が付いたのですが、[STEREO] 表示がチラつくことがあります。
-
[STEREO] 表示がチラつく
-
原因は同調点調整ズレです。
-
放送局に同調時に R256 両端電圧が 670mV になっていました。
ここは調整目標値 0±20mV です。
-
IFT251 で同調点を再調整して直りました。
-
FUSE 抵抗のチェック
-
FUSE 抵抗は各回路の電源部に使われています。
この抵抗は劣化しやすいのが難点です。
-
念のためチェックしてみましたが、特に問題ありませんでした。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
対策 |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
103 |
〇 |
|
WOIS |
R203 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
R207 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
R211 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
R227 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
IF |
R259 |
100 |
104 |
〇 |
|
DET |
R274 |
10 |
10.3 |
〇 |
|
R279 |
220 |
159 |
△ |
動作に支障なし |
R292 |
100 |
102 |
〇 |
|
MPX |
R301 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
R327 |
47 |
47.7 |
〇 |
|
AM |
R403 |
220 |
230 |
〇 |
|
R410 |
150 |
157 |
〇 |
|
PLL |
R511 |
220 |
225 |
〇 |
|
R516 |
180 |
186 |
〇 |
|
CONTROL |
R626 |
47 |
47.4 |
〇 |
|
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
22.5 |
〇 |
|
R921 |
220 |
226 |
〇 |
|
R931 |
220 |
220 |
〇 |
|
-
ハンダクラック対策
-
ST-S333ES シリーズでは銅製のアースバーが敷かれています。
-
これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
-
目視でハンダクラックとわかる箇所が何か所かありました。
アースバーの全てに補修ハンダを行いました。
-
リアパネルの端子類
-
どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
-
修理依頼者によると [アンテナ端子の接続半田もリペアしました] とのことですが、その形跡は見られませんでした。
-
[プリセット用のコンデンサは取り替えました] については確かに交換されていました。
-
全ての端子のリードと基板のハンダ付け部分に補修ハンダを行いました。
-
電源部の電解コンデンサ 1000μF/63V の足元何かが漏れている ・・・ 修理依頼者より
-
ここは電解コンデンサの振動を防ぐため接着剤が塗布されています。
これの固形跡なので問題ありません。
-
その他
-
S メータの振れが電源 ON 直後はやや低めで、しばらく時間が経つと徐々に上がるのは故障ではないです。
-
周波数がデジタル表示されていても、基本はアナログ回路なのでウォーミング時間が必要なのです。
-
交換した部品の記録
-
写真は基板に元付いていた故障した [トリマコンデンサ×3個] です。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
特に問題なく良好です。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+29.9V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.3V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.2V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.68V |
〇 |
DIGITAL |
-
調整結果
-
ST-S333ESA (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
-
やはり
32年物ビンテージ
(2023年時点) ですから、あちこち経年変化のズレがありました。
-
FM は再調整で下のような非常に良好な数値となりました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
58 |
62 |
dB |
NARROW |
37 |
34 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.015 |
% |
stereo |
0.015 |
% |
NARROW |
mono |
0.22 |
% |
stereo |
0.86 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-74 |
-76 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
421.9 |
Hz |
-5.8 |
-5.8 |
dB |
-
AM は純正ループアンテナの添付がなく、RF 系調整ができないので、IF 調整のみとしました。
使ってみました
-
全体的にゴールド基調のデザイン
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
サイドウッドは鏡面仕上げでラウンド加工されています。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。