SONY ST-S333ESG (5号機) が到着
2022年6月8日、川崎市の S さんより
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が届きました。
S さんの自家配送です。
写真は修理完了後です。
S メータが元気良く振れてイイ音を奏でています。
到着した状態のまま、状態チェック
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依頼者のコメント
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0.1MHz 同調ズレしています。
受信感度が悪く、ステレオ表示が点滅します。
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[メモリ出来ない] [出力のどちらか音が出なくなる] [リレーがカチカチして周波数ロックしなくなる] の現象があります。
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外観
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フロントパネルを正面から見ると綺麗です。
パネルが天板へ折り返す部分にポツポツと5箇所の極少のキズがあります。
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天板の1箇所、ポツンとヘコミとキズがあります。
リアパネルは綺麗で、端子類にも問題ありません。
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左サイドウッドの正面にポツンと白っほいキズがあります。
右サイドウッドは綺麗です。
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製造シリアル番号は [200712] です。
電源コードの製造マーキングより1989年製とわかりました。
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電源 ON にて確認
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電源は問題なく入り、ディスプレイの輝度は新品同様です。
各ボタンやノブの操作は正常です。
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FM は 80.0MHz の放送が 79.9MHz で受信し、ステレオになります。
-0.1MHz の周波数ズレがあります。
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上記の放送を 80.0MHz で受信すると、ステレオランプがチカチカ点滅します。
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感度が低下しているようで、S メータは少ししか振れません。
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AM は問題なく受信でき、S メータも振れます。
感度が良いです。
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カバーを開けてチェック
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カバーを開けて電源 ON すると、ディスプレイが真っ黒になって FM/AM とも受信できなくなりました。
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基板中央付近にある一番大きな電解コンデンサ付近を揺すると、ディスプレイが点いたり消えたりします。
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どうやら、どこかで半田クラックがあるようです。
補修が必要です。
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[C605 0.1F/5.5V] の電気二重層コンデンサから液漏れして茶色くなっています。
交換が必要です。
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オーディオ出力の RCA 端子台のプラスチックが割れています。
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このため、特に右チャンネルの端子がグラグラしています。
気を付けて使えば、使えないことはないです。
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基板には全体にゴミが溜まっています。
黄色っぽいゴミなので、タバコのヤニでは?
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その他
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[AM ループアンテナ] が添付されなかったので、AM は完全調整できません。
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AM は一般的な調整だけにします。
リペア
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半田クラックがありそう
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調べると電源回路の横を縦方向 (フロント〜リア方向) を走っているアースバー×2本で半田クラックがありました。
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これらのアースバーを補修半田したら、大きな電解コンデンサを揺すってもディスプレイが消えなくなりました。
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修理依頼者コメントの [リレーがカチカチして周波数ロックしなくなる] の原因でもあります。
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更に、[基板を横方向に走るアースバー] [リアパネルの端子のリード] も補修半田しました。
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メモリ出来ない (プリセットメモリがバックアップされない)
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[C605 0.1F/5.5V] の電気二重層コンデンサから液漏れして故障したためです。
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[1F/5.5V] 電気二重層コンデンサと交換しました。
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右の写真は新しく実装した縦型の電気二重層コンデンサです。
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サイズが大きいので縦型でないと基板に乗らないです。
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0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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感度が低い
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FM フロントエンドが大きく調整ズレしているのが原因です。
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更に調べると RF 段トリマコンデンサが劣化していました。
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RF 段トリマコンデンサは3個ありますが、全数交換して直りました。
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右の写真は新しく実装したトリマコンデンサです。
セラミック型です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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オーディオ出力の RCA 端子台が壊れている
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修理依頼者コメントの [出力のどちらか音が出なくなる] の原因でもあります。
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下の写真は元の端子台です。
[黒いプラスチックに割れ] [右チャンネルの白いリード押さえプラスチックが欠損] [右チャンネルの上の丸ポッチが欠損] でグラグラでした。
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同じ端子台は入手できないので、右のような高級 RCA 端子と交換しました。
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写真は右チャンネル用で識別リングが赤ですが、左チャンネル用は識別リングが白です。
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削り出しで製作されたお高い端子です。
金ピカが眩しい!
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筐体とは白いリングスペーサで絶縁できます。
まさにオーディオ用です。
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ST-S333ESG に開けられた穴をそのまま使え、筐体加工不要でした。
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配線にはグレードの高い耐熱電線を使いました。
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交換後は当然ですがグラグラしません。
高級感バッチリです。
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下の写真は交換後です。
格好良くなりました。
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FUSE 抵抗のチェックと交換部品の記録
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FUSE 抵抗のチェック結果は以下の表です。
極端な値はないので大丈夫です。
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写真は故障していた部品です。
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青い円筒形の部品は電気二重層コンデンサです。
液漏れして茶色くなっています。
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RCA 端子台は取り外したら、右チャンネル端子がゴロンと脱落しました。
全然ダメです。
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茶色い部品×3個は劣化したトリマコンデンサです。
このタイプは劣化しやすいようです。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
92 |
WOIS |
R203 |
10 |
9.9 |
R207 |
10 |
9.9 |
R211 |
10 |
10 |
R227 |
10 |
10 |
IF |
R259 |
100 |
100 |
DET |
R274 |
10 |
10 |
R279 |
100 |
84 |
R292 |
100 |
148 |
MPX |
R301 |
10 |
10 |
R327 |
47 |
60 |
AM |
R403 |
220 |
219 |
R410 |
150 |
148 |
PLL |
R511 |
220 |
219 |
R516 |
180 |
178 |
CONTROL |
R626 |
47 |
48 |
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
28 |
R921 |
220 |
308 |
R931 |
180 |
228 |
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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特に問題なく良好です。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.6V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.9V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.2V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.38V |
〇 |
DIGITAL |
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調整結果
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ST-S333ESG (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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再調整後は特に問題はなく、良好な数値です。
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ステレオ時の高調波歪率は 0.025% (WIDE 1kHz) でした。
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モノラル時の高調波歪率は 0.015% (WIDE 1kHz) でした。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
65 |
70 |
dB |
NARROW |
54 |
51 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-73 |
-80 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
+0.23 |
dB |
CAL TONE 信号 (mono) |
463.0 |
Hz |
-5.8 |
-5.8 |
dB |
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AM はループアンテナが添付されなかったので、一般的な調整だけにしました。
良好に受信できました。
使ってみました
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全体的にブラック基調のデザイン
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SONY デザインはやはり格好イイです。
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デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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サイドウッド付で高級感を醸し出しています。
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リアパネル
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今回、RCA 端子を高グレード品に交換したので、更に高級感が出ました。
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でも誰も裏側なんて見てくれません。
自己満足かな。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。