SONY ST-S333ESG (6号機) が到着
2022年7月8日、山梨県南都留郡の T さんより
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が届きました。
写真は修理完了後です。
S メータがちゃんと振れるようになりました。
到着した状態のまま、状態チェック
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依頼者のコメント
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SONY ST-S333ESG を30年以上に渡り使用してきたのですが、とうとうダウンしてしまいました。
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症状としては、徐々に音量が低下して、最後は全く無音になります。
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日を改めて電源を入れると復活したりしていましたが、今はパネルの表示も全く点かない状態です。
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愛着ある音なので、なんとか復活させたいと思っています。
修理お願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [206001] です。
電源コードの製造マーキングより1990年製とわかりました。
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かなり大切に使われてきたであろう、ほぼキズなしの綺麗な逸品です。
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リアパネルの端子類に錆はなく、ピカピカです。
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底板はこんな綺麗な状態は見たことがないというほどの新品に近いです。
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純正の AM ループアンテナの添付がありました。
これで AM はキチンと調整できます。
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電源 ON にて確認
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電源は問題なく入り、各ボタンやノブの操作は正常です。
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ディスプレイの輝度は少しヤセがありますが、まだまだ十分使えます。
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表示はされるので、ここが修理依頼者のコメントと違います。
時間が経つと消えるのかな?
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FM は感度がかなり悪化しており、60dB 程度の電波では全く受信しません。
90dB の電波で S メータがやっと振れる程度です。
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AM は問題なく受信でき、S メータも振れます。
感度が良いです。
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カバーを開けてチェック
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内部に薄っすらと煤のようなゴミは見られますが、かなり綺麗です。
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[C605] 0.1F/5.5V の電気二重層コンデンサには液漏れ等はありません。
でも使用年数を考えると無条件に交換したほうがよさそうです。
リペア
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電気二重層コンデンサ交換
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プリセットメモリのバックアップ用電気二重層コンデンサを交換しました。
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製造から32年経過 (2022年時点) しているので、交換時期です。
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[C605] 0.1F/5.5V → 1F/5.5V と交換しました。
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右の写真は新しく実装した縦型の電気二重層コンデンサです。
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サイズが大きいので縦型でないと基板に乗らないです。
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0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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FM の感度が非常に悪い
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FM フロントエンドの RF 部のトリマコンデンサが劣化したのが原因です。
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トリマコンデンサはハトメ構造なので、経年変化でハトメ部に錆が乗ります。
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RF 段トリマコンデンサは3個ありますが、全数交換しました。
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右の写真は新しく実装したトリマコンデンサです。
セラミック型です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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半田クラック対策
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基板内のアースバーで半田付け部分に目視でわかる半田クラックがありました。
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対策として全部のアースバーを補修半田しました。
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FUSE 抵抗のチェックと交換部品の記録
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FUSE 抵抗のチェック結果は以下の表です。
極端な値はないので大丈夫です。
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写真は交換前に基板に乗っていた部品です。
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青い円筒形の部品は電気二重層コンデンサです。
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茶色い部品×3個は劣化したトリマコンデンサです。
このタイプは劣化しやすいようです。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
98 |
WOIS |
R203 |
10 |
10 |
R207 |
10 |
10 |
R211 |
10 |
10 |
R227 |
10 |
10 |
IF |
R259 |
100 |
99 |
DET |
R274 |
10 |
10 |
R279 |
100 |
83 |
R292 |
100 |
101 |
MPX |
R301 |
10 |
10 |
R327 |
47 |
48 |
AM |
R403 |
220 |
217 |
R410 |
150 |
147 |
PLL |
R511 |
220 |
218 |
R516 |
180 |
178 |
CONTROL |
R626 |
47 |
47 |
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
22 |
R921 |
220 |
216 |
R931 |
180 |
179 |
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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特に問題なく良好です。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.7V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-18.0V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.4V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.56V |
〇 |
DIGITAL |
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調整結果
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ST-S333ESG (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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再調整後は特に問題はなく、良好な数値です。
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ステレオ時の高調波歪率は 0.01% (WIDE 1kHz) でした。
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モノラル時の高調波歪率は 0.009% (WIDE 1kHz) でした。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
60 |
64 |
dB |
NARROW |
30 |
29 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-74 |
-82 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
+0.23 |
dB |
CAL TONE 信号 (mono) |
421.9 |
Hz |
-6.1 |
-6.1 |
dB |
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AM は添付された純正ループアンテナで調整しました。
良好に受信できました。
使ってみました
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全体的にブラック基調のデザイン
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SONY デザインはやはり格好イイです。
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デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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サイドウッド付で高級感を醸し出しています。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。