SONY ST-S333ESX (3号機) をゲット!
2020年4月9日、新潟県上越市の U さんから
SONY ST-S333ESX
の故障品を研究用に寄贈していただきました。
言い訳
-
2号機
より先に入手していたのに3号機になったのは ・・・
-
動作チェック中に誤って LA1235 のピンを電源と短絡させて壊してしまい、心が折れたためです。
-
今回 (2022年2月)、気を取り直してリベンジし、3号機としました。
到着後、程度&動作チェック
-
寄贈者からのコメント
-
FM のオートチューニングとステレオ受信ができない故障品ですが、宜しかったら実験用に如何でしょう。
-
外観
-
1987年製造で、シリアル番号は [207684] です。
-
全体的には並みの中古状態です。
パッと見は綺麗です。
-
フロントパネルにあるディスプレイの透明アクリル板にポチッと1点キズがあります。
そう目立たないのでガマンですね。
-
リアパネル自体は綺麗ですが、ここにある端子に薄いサビが出ています。
-
天板の右側に小さいヘコミが2箇所あります。
醜くはないのでガマンですね。
-
左側サイドウッドの下側の化粧板がめくれ上がっています。
特に下側の一番前と一番後が程度が悪いです。
-
右側サイドウッドの下側の化粧板がめくれ上がっています。
特に下側の一番後が程度がかなり悪いです。
-
入手した状態のまま電源 ON してチェックしました
-
電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
-
ボタン操作でタクトスイッチの劣化を感じます。
動作しない時は、もう1度押すと動作します。
-
FM は MUTING:OFF でしか受信できず、当然、モノラルでしか聴けません。
-
寄贈者のコメントの通りです。
おそらく、同調点が大きくズレていると思います。
-
AM は問題なく良好に受信できます。
リペア
-
FM 受信でオートチューニングとステレオ受信ができない
-
予想通り、同調点がまるでズレています。
通常 0±20mV のところ、5V くらいになっていました。
-
IFT205 内蔵コンデンサの容量抜けが原因で、外部に 15PF を追加したら S カーブが出るようになりました。
-
オートチューニングやステレオ受信できることを確認しました。
もう動作良好です。
音も良いです。
-
これはあくまで仮対策で、正式には IFT205 の交換が必要です。
-
この状態では周囲温度の変化に弱いのです。
冬は良くても夏はダメとか。
-
この部品は入手困難なので、いつ正式対策できるだろうか?
-
タクトスイッチの劣化
-
タクトスイッチの僅かな隙間から
エレクトロニッククリーナー
を吹きかけ、ON/OFF を繰り返したら直りました。
-
最近はこの方法でも十分リペアできることに気が付きました。
-
接点にある薄い酸化膜が取れるのです。
本当に悪いタクトスイッチは交換しますが。
-
動作チェック中に誤って LA1235 のピンを電源と短絡させて LA1235 を壊してしまいました!!!
-
IC ソケット化してから LA1235 を交換したら直りました。
当然です。
-
この作業をする時は、ハンダゴテに 15W の精密級を使ったほうが良いです。
40W だとプリントパターンを痛めます。
-
こうすると、本機を LA1235 の動作チェックマシンとして使えるようになります。
言い訳?
-
LA1235 などの古い IC は
AliExpress
で安価で入手できます。
入手までに1ヶ月かかるのが難点ですが。
-
外観の改善
-
リアパネルにある端子の薄いサビ
-
RCA 端子はティッシュで擦るとピカピカになりました。
-
左右サイドウッドの化粧板のめくれ上がり
-
乾いたら透明になるホワイトボンドを塗布し、化粧板の上に板とおもりを置いて24時間かけて再接着しました。
-
乾いてから部分的に補修塗りをしました。
-
これ以上はどうしようもないと諦められる程度に回復し、特に前方から見たら分らないようになりました。
-
以上で [並みの中古] → [少しマシな並みの中古] 程度には改善できました。
-
全体の清掃
-
内部に若干たまっていたゴミはブラシとエアダスターで除去しました。
-
全体を OA クリーナで清掃しました。
調整
-
電圧チェック
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JW174 |
+15V |
+16.05V |
チューナ用 |
JW122 |
+15V |
+15.64V |
FL 管用 |
JW169 |
+5.6V |
+5.63V |
デジタル用 (MCU) |
JW92 |
+30V |
+30.21V |
VT 電圧用 |
D907-R |
-6V |
-5.62V |
コントロール用 |
-
ST-S333ESX (1号機)
に記載の手順で再調整しました
-
全高調波歪率 (stereo 1kHz) は 0.007% で超優秀です。
-
WIDE 時のステレオセパレーション L ch. の値がやや低い結果となりました。
-
RT301 が反時計回り限界になり、これ以上調整できなかったからです。
-
劣化している部品があるのでしょうが、57dB でも十分優秀なので、このままとしました。
-
上記以外に気になる数値はなく、優秀な性能が出ています。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
57 |
76 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
30 |
30 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-81 |
-82 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
-0.04 |
dB |
CAL TONE |
398.4 |
Hz |
-6.03 |
-5.88 |
dB |
使ってみました
-
パネルやボタンなどの機構部はバブル期 (1985〜1991年) を反映した贅沢な作りになっており、
超貴重品!
-
FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
-
AM も、感度が良く、音も良いです。
-
電源ケーブルの製造マーキングは1987年で、内部の IC は1986年製でした。
よって、この ST-S333ESX は1987年製で間違いないです。
-
高級感あふれる贅沢なチューナです。
超お奨め!!!
-
SONY の ST-S333ES シリーズ FM チューナについて
-
ST-S333ES シリーズは ST-S333ESX (1986年) に始まり、ST-SA5ES (1995年) で終わりました。
-
ちょうど日本のバブル経済期と一致しています。
-
ST-S333ESX の1つ前に ST-S333ES (1984年) がありますが、構成が全然違うので除外しています。
-
むしろ、
ST-S555ESX
(1986年) が前作に当たります。
-
ST-S555ESX ではディスクリート構成であった MPX を高性能 IC 化したのが ST-S333ESX です。
-
ST-S333ESX が記念すべき初代
で、SONY の高級 FM チューナの製造技術が確立しました。
-
これ以降は全てマイナーチェンジで、構成はほぼ変わらず、性能も変わりません。
-
同調ノブのない ST-S333ESX はデザイン的に筆者の好み
-
全てボタン操作だけなので、フロントパネルがフラットでスッキリしています。
-
デジタルチューニングなので、同調ノブなんて不要
-
通常はプリセットボタンで選局すると思うので、同調ノブなんて全く使わない
-
使わないし、デザインを崩すし、
同調ノブがないほうが美しい!
-
懸案事項
-
IFT205 の修理が仮対策となっています。
正式には IFT205 の交換が必要です。
-
ただし、この同調点が多少狂っても性能には影響しないです。
問題は周囲温度の変化に弱いことです。