SONY ST-S333ESX (5号機) が到着!
2022年7月17日、さいたま市の N さんより
SONY ST-S333ESX
の修理依頼品が到着しました。
N さんの自家配送でした。
ST-S333ESX は好みの機種です。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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特に問題はなかったと思います。
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[電源部の電解コンデンサの交換] [電気二重層コンデンサの交換] [再調整] などをお願いします。
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外観
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シリアル番号は [205807] でした。
電源コードの製造マーキングより、1986年製造品とわかりました。
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左右のサイドウッドが無く、全体的には並みの中古状態です。
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到着時にラップフィルムでグルグル巻きにされていたので、以下の問題があります。
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[POWER] スイッチにラップフィルムからの移りがあって、何やら透明の膜が付いています。
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ディスプレイの透明アクリルにラップフィルムからの移りがあって、何やら透明の膜が付いています。
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ラップフィルムに含まれる何らかの化学物質が乗り移ったようです。
修復不能の気がします。
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以上の点を除けば、フロントパネルはまあまあ綺麗です。
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リアパネルに汚れがありますが、端子類は問題ないです。
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天板と底板はまあまあ綺麗です。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
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FM は問題なく受信でき、ステレオになります。
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オートチューニングで問題あります。
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[低い→高い] 周波数方向では正常に放送局の周波数でストップします。
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[高い→低い] 周波数方向では放送局を見つけられません。
おそらく同調点ズレです。
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AM は問題なく良好に受信できます。
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カバーを開けてチェック
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開けてビックリ!玉手箱
と言うのはきっとこのことでしょうね。
赤茶色の綿埃ゴミがビッシリ絨毯状に堆積していました。
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手で摘まめる程度ですから、厚みは 5mm 以上あります。
基板上の部品が全く見えません。
かなり酷いです。
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火災にならずに今日までよく動いていたと感心しました!
あわわ〜
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まずは、この綿埃を取らないと部品のチェックができません。
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清掃してからチェックすると、[FM トリマコンデンサ]×3個で調整ネジ部分が真っ黒でした。
無条件に交換です。
リペア
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[FM トリマコンデンサ]×3個で調整ネジ部分が真っ黒
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劣化ですから、無条件に交換しました。
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右の写真は新しく実装したトリマコンデンサです。
セラミック型です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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コンデンサ交換 ・・・ 修理依頼者からのリクエスト
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交換の方針
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電源部の電解コンデンサは全数交換する。
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FM オーディオ信号が通過する電解コンデンサは全数交換する。
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プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサは交換する。
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使用する電解コンデンサはオーディオクラス品とする。
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部品交換リスト
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MPX のコンデンサは精度が良く周波数特性も良いフィルムコンデンサに交換しました。
お高いコンデンサです。
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交換対象数が多くて大変でした。
用途 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
電源 |
C901 |
電解コンデンサ |
470uF/25V |
オーディオ用 電解コンデンサ |
470uF/25V (FG) |
C902 |
100uF/16V |
100uF/25V (FG) |
C903 |
2200uF/35V |
2200uF/50V (KW) |
C904 |
47uF/10V |
47uF/25V (FG) |
C905 |
100uF/16V |
100uF/25V (FG) |
C906 |
47uF/10V |
47uF/25V (FG) |
C907 |
1000uF/35V |
1000uF/50V (FG) |
C908 |
100uF/50V |
100uF/50V (FG) |
C909 |
47uF/35V |
47uF/50V (FG) |
C910 |
100uF/35V |
100uF/50V (FG) |
C911 |
330uF/50V |
330uF/50V (FG) |
検波 |
C243 |
電解コンデンサ |
33uF/25V |
オーディオ用 電解コンデンサ |
33uF/25V (MUSE/ES) (BP) |
MPX |
C305 |
電解コンデンサ |
0.47uF/50V |
フィルムコンデンサ |
0.47uF/100V |
C306 |
1uF/50V |
1uF/100V |
C307 |
1uF/50V |
1uF/100V |
C308 |
1uF/50V |
1uF/100V |
C309 |
0.1uF/50V |
0.1uF/100V |
C311 |
0.47uF/50V |
0.47uF/100V |
C321 |
1uF/50V |
1uF/100V |
C324 |
0.47uF/50V |
0.47uF/100V |
C327 |
4.7uF/50V |
オーディオ用 電解コンデンサ |
4.7uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
C328 |
4.7uF/50V |
4.7uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
メモリ バックアップ |
C601 |
電気二重層 コンデンサ |
39mF/5.5V |
電気二重層 コンデンサ |
0.47F/5.5V |
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交換後の記録写真
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左の写真は電源部です。
[金色] [黒に金文字] のコンデンサが交換後です。
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コンデンサが斜めに取り付けているのは、実装がヘタだからではありません。
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放熱板やトランジスタの発熱部からできるだけ遠ざけるためです。
ちゃんと理由があるのです。
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右の写真は MPX 部です。
[四角い黄色] [緑色] のコンデンサが交換後です。
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左の写真の [緑色] で全形が写っているコンデンサが交換後です。
検波部〜MPX 部を結合します。
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右の写真の [黒色] で円盤状のコンデンサが交換後の電気二重層コンデンサです。
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[39mF] → [0.47F] と12倍の容量になったので、プリセットメモリを数ヶ月保持できるかも。
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写真は交換前に基板に実装されていた部品です。
交換した [トリマコンデンサ] を含みます。
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ラップフィルムからの移りで何やら透明の膜が付いている
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ディスプレイの透明アクリルについては無水アルコールで膜を溶かしてほぼ取れました。
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無水アルコールは溶かす作用があるので、この方法は [POWER] スイッチには使えません。
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なぜなら [POWER] という文字がプリントされており、無理にやると文字が消えてしまいます。
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よって、[POWER] スイッチの膜は放置です。
何にもしていません。
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オートチューニングで問題がある
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FM 同調点が調整ズレが原因でした。
再調整で直りました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JW174 |
+15V |
+15.8V |
チューナ用 |
JW122 |
+15V |
+15.7V |
FL 管用 |
JW169 |
+5.6V |
+5.56V |
デジタル用 (MCU) |
JW92 |
+30V |
+30.5V |
VT 電圧用 |
D907-R |
-6V |
-5.60V |
コントロール用 |
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ST-S333ESX (1号機)
に記載の手順で再調整しました
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ステレオ時の全高調波歪率は 0.04% (WIDE 1kHz) で優秀です。
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ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
70 |
70 |
dB |
NARROW |
31 |
34 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-80 |
-79 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
398.4 |
Hz |
-6.0 |
-6.0 |
dB |
使ってみました
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パネルやボタンなどの機構部は贅沢な作りになっており、
超貴重品!
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FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
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AM も、感度が良く、音も良いです。
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高級感あふれる贅沢なチューナです。
超お奨め!!!