SONY ST-S333ESA (2号機) をゲット!
2009年5月15日、私のチューナーページのファンから
SONY ST-S333ESA
の故障品をいただきました
写真は修理前のものです。(FL 表示が少し薄い)
故障品をもらって喜ぶのは私のようなマニアだけと思います。
ご覧の皆さんも捨てるチューナーがあれば、ぜひご連絡ください。
到着後、程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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サイドウッドや天板に傷があります。
S メータが振れず受信出来ません。
内部をいじられている痕跡があります。
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何箇所か再ハンダされています。
メモリ用のコンデンサがオリジナルのものとは違っています。
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フェライトコアは割れてはいませんでしたが、回されているような感じです。
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部品取りにお使いください。
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外観
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全体的に外観はマアマア良く、並の中古レベルです。
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フロントパネルは正面から見ると綺麗ですが、天板側に折り返した部分に薄っすらとした擦りキズがあります。
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右側サイドウッドは若干のキズとヘコミがありますが、左側サイドウッドはキズがなく綺麗です。
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天板はポツポツと細かい塗装ハゲがありますが、ヘコミはありません。
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リアパネル, 底板はいずれも綺麗で問題ありません。
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AM ループアンテナ接続端子は少し錆が出ています。
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F 端子やオーディオの RCA 端子は綺麗です。
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[リモコン] [AM ループアンテナ] は欠品です。
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電源を入れて動作チェック
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電源は問題なく入りました。
FL パネル表示は少し薄いです。
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チューニングノブを回すと周波数表示は変化しますが、S メータは全く振れません。
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上の状況は FM でも AM でも同様です。
状況より
VT 電圧が出ていないと見立て
ました。
カバーを開けてみました
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内部に綿ボコリはないですが、基板一面にススのような汚れがあります。
写真をクリックすると拡大写真を表示できます。(修理後の写真です。)
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内部をいじった形跡はありますが、問題ない程度です。
多少はコア調整などをしているかもしれませんが、改造などはないようです。
メチャクチャにいじられていると、修理が困難になります。
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使用 IC のロット番号より、この ST-S333ESA は1991年製と判明しました。
電源ケーブルの製造マーキングも1991年でした。
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ST-S333ESA (1号機)
は後期型でしたが、この個体は初期型のようです。
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1号機と2号機でフロントパネルの色も若干違います。
1号機は標準的なゴールド色ですが、2号機はシルバーに近い薄いゴールド色です。
リペア
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状態からは 「VT 電圧が出ていない」 と見立てました
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VT 電圧を測定してみると、全く出ていません。
これでは FM/AM 共受信できないはずです。
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トラブルシューティング
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電源電圧を測定してみました。
-17V が少し低い以外は正常です。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+31.1V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.1V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-13.8V |
少し低い |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.7V |
〇 |
DIGITAL |
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VT 電圧が出ない
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IC162 RC4558P 8pin に電源電圧がかかっていない → R516 FUSE 抵抗 180Ω 断線 → R516 交換
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VT 電圧が正常に出るようになり、チューニングで S メータが僅かに振れるようになったが、音が出ない
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S メータの振れが小さい
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IC251 LA1235 11pin の電源電圧が低い → R259 FUSE 抵抗 100Ω 半断線 → R259 交換
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S メータが正常に振れるようになり、AUTO チューニングが出来るようになったが、音が出ない
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PLL 検波回路に IF周波数を伝達する IC271 が動作していない
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IC271 uPC1163HA 1pin に電源電圧がかかっていない → R274 FUSE 抵抗 10Ω 断線 → R274 交換
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IC271 が正常に動作するようになったが、音が出ない
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PLL 検波回路のローカル発振器が発振していない
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ローカル発振を行う Q271 2SK125 D に電圧がかかっていない → R279 FUSE 抵抗 220Ω 断線 → R279 交換
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PLL 検波回路が正常に動作するようになり、FM 受信で音が出るようになり STEREO 表示も出るようになった
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FM 受信は正常になったが、AM 受信ができない
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原因は R410 FUSE 抵抗 150Ω の断線でした → R410 交換
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AM 受信も正常になりました
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FL パネル表示が少し薄い
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電源電圧の -17V が低いためです。
原因は R931 FUSE 抵抗 の劣化でした → R931 交換
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FL パネル表示の輝度が正常になりました。
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FUSE 抵抗がことごとく劣化しているので、全 FUSE 抵抗を調査 → 劣化した抵抗のみ交換 ・・・ 直りました! チャン↓チャン↑
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以下の表はその結果です。
実測値で赤文字のものが異常で、この抵抗のみ交換しました。
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交換し辛い場所があったので、バラバラに分解してチューナー基板を完全に取り外して交換しました。
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抵抗は外形サイズを合わせたので、1/4W → 1/2W, 1W → 2W としました。
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これだけ多くの FUSE 抵抗が同時に劣化するのは通常考えられません。
おそらく、この ST-S333ESA はパワーアンプなどの熱の出る機器の上に長時間乗せて使われていたのではないか? ・・・ この熱の影響で FUSE 抵抗が徐々に劣化したのだと思います。
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ST-S333ES シリーズのチューナーを数多く調整してきた経験からは、どう調整しても感度があまり上がらないなどの性能に問題を感じる個体があります。
ひょっとしたら、この FUSE 抵抗の劣化が原因だったかもしれません。
新しいチェック項目を発見しました。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
交換値 (Ω) |
W 数 (W) |
交換し辛い 場所にある |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
180 |
100 |
1/4 |
○ |
WOIS |
R203
R207
R211
R227 |
10
10
10
10 |
10
10
10
10 |
-
-
-
- |
1/4
1/4
1/4
1/4 |
|
IF |
R259 |
100 |
480 |
100 |
1/4 |
○ |
DET |
R274
R279
R292 |
10
220
100 |
断線
断線
580 |
10
220
100 |
1/4
1/4
1/4 |
|
MPX |
R301
R327 |
10
47 |
10
220 |
-
47 |
1/4
1/4 |
|
AM |
R403
R410 |
220
150 |
290
断線 |
220
150 |
1/4
1/4 |
○
|
PLL |
R511
R516 |
220
180 |
290
断線 |
220
180 |
1/4
1/4 |
|
CONTROL |
R626 |
47 |
220 |
47 |
1/4 |
○ |
POWER SUPPLY |
R910
R912
R921
R931 |
22
10
220
180 |
60
10
1100
1400 |
22
-
220
220 |
1/4
1/4
1/4
1 |
|
-
抵抗の交換と同時に、お決まりのリアパネル端子とメインボードのハンダ付け部も補修ハンダ
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抵抗交換後の各電源電圧は以下のように全て正常になりました。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+31.0V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.1V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-18.1V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.7V |
〇 |
DIGITAL |
-
全体のクリーニング
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基板のススらしきゴミは、平面状のところは無水アルコールとティッシュ、部品がある所は綿棒で落としました。
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外装は全体のゴミを排除してから OA クリーナにてクリーニングしました。
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再調整
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ST-S333ESA (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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やはり、この個体はコアなどをいじくられていました。
再調整にて感度と音質が見違えるように大幅向上!!!
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全体に良い数値です。
ステレオ時の高調波歪率は 0.005% (1kHz)
と優秀な数値が出ました。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
57 |
60 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
35 |
33 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-72 |
-73 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
410.2 |
Hz |
-6.5 |
-6.6 |
dB |
使ってみました
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全体的にゴールド基調の色合いでなかなか優れたデザインで私好みです。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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サイドウッドは鏡面仕上げでラウンド加工されています。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音です。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。
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感度が良く、とても良いチューナーです ・・・ 部品取りのつもりが正常な予備機になってしまった!!!