Technics ST-G60 (2号機) が到着
2023年4月6日、富山県高岡市の F さんより
Technics ST-G60
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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チューニングがズレています。
ステレオランプが点きません。
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ミューティング等のスイッチがうまく働いているのかわかりません。
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外観
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製造シリアル番号は [FC6K21A291] です。
純正 AM ループアンテナの添付はありませんでした。
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フロントパネルはポチッとした点キズがあるものの綺麗です。
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[75Ω端子] がグラグラしています。
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天板はあちこちスレとヘコミがあります。
状態は悪いです。
ラックに入れれば見えない部分なので諦めです。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、ディスプレイの表示も出ます。
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操作ボタンのほとんどで効きが悪くなっており、マトモに操作できません。
タクトスイッチ全数交換が必要です。
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FM は受信できるのですが、うまく同調できていないようで音に歪が感じられるのと感度低下していましす。
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AM は手持ちの Panasonic AM ループアンテナ (たぶん純正) をつないで問題なく受信できました。
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カバーを開けてチェック
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内部全体や基板は綺麗です。
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[C902] [C903] の電気二重層コンデンサ 3.3F/2.3V が膨張して、基板に液漏れしています。
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誰かが改造しています。
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この機種の電源ソケットはメガネ端子のはずが、電源コード括り付けに改造されています。
(左の写真)
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オーディオ出力 RCA 端子が金メッキタイプに交換されています。
(右の写真)
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電源トランスに薄い銅板を巻く改造が施されています。
(左の写真)
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[コントロール入力端子] が改造され、こちらも AM ループアンテナ入力になっています。
(右の写真)
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その代わり [コントロール入力端子] としては使えなくなっています。
リペア
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FM はうまく同調できていないようで音に歪が感じられるのと感度低下している
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FM 同調点がズレていました。
クォードラチュア検波段調整で直りました。
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音が良くなり本来の音質に回復しました。
感度も上がりました。
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操作ボタンのほとんどで効きが悪くなっている
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タクトスイッチの劣化が原因です。
タクトスイッチを全数17個交換しました。
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当たり前ですが、各ボタン操作でスムーズに正しく反応するようになりました。
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特に ST-G60 の場合、長押しで機能が変わるボタンがあるのです。
これがタクトスイッチの劣化で今までできませんでした。
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プリセットボタンは短押しで 1〜8、長押しで 9〜16 を選択します。
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tuning [down] [up] ボタン長押しで auto sacan tuning します。
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[sacan level] ボタン長押しで auto scan tuning で放送局を見つけるレベルを変更します。
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[C902] [C903] の電気二重層コンデンサ 3.3F/2.3V が膨張して基板に液漏れしている
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液漏れはまだ少しだったので、無水アルコールで除去できました。
間一髪です! 放置したら基板が腐食するところでした。
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3.3F/2.3V 2本を直列接続して 1.65F/4.6V として使っていましたが、これを1本で済む 1F/5.5V 電気二重層コンデンサに交換しました。
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ここには +5V がかかります。
耐圧 4.6V では足りません。
そもそも使い方が誤っています。
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交換した電気二重層コンデンサは密閉型でまず液漏れしません。
強力両面テープで固定しました。
(下の写真)
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リアパネルの [75Ω端子] がグラグラしている
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原因は接合爪が破損して固定できていないためです。
(左の写真)
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どうしようもないので、ハンダ付けで固定しました。
(右の写真)
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ハンダ付けの熱で少しプラスチック部分が変形しましたが、問題ない程度に修復できました。
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AC コードを別物に交換されているが、留め金具の片方のネジが不安定に留まっている
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ネジに平ワッシャを追加し、しっかり留まるよう補修しました。
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[power] スイッチとリアパネルの端子のハンダ付け部分に目視で判るハンダクラックがある
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これらのハンダ付け部分を補修ハンダ付けして直りました。
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フロントパネルはポチッとした点キズがある
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自動車用タッチペン艶消し黒で補修塗りしてマシになりました。
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交換した部品の記録
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交換前に基板に実装されていた部品です。
円筒形は電気二重層コンデンサで、これ以外はタクトスイッチです。
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電気二重層コンデンサのトップが被覆から飛び出しています。
こうなると膨張劣化で液漏れします。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように正常でした。
ポイント |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
Q701-E |
+13V |
+13.6V |
〇 |
チューナ/オーディオ用 |
Q702-E |
+5.6V |
+5.49V |
〇 |
デジタル用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 同調点のズレが大きかったです。
再調整で規格内に入りました。
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ステレオセパレーションがかなり下がっていました。
再調整で良好な性能に戻りました。
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再調整後の FM 性能値は以下です。
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IF band : normal 時のセパレーションはかなり良好な数値です。
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IF band : super narrow 時は自動的に Hi-Blend がかかるので、セパレーションが大きく落ち込みます。
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できるだけ IF band : normal で使ったほうがよいです。
項目 |
IF band |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
normal |
stereo |
52 |
56 |
dB |
super narrow |
25 |
24 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
normal |
mono |
0.056 |
% |
stereo |
0.056 |
% |
super narrow |
mono |
0.41 |
% |
stereo |
1.9 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
normal |
stereo |
-54 |
-50 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
normal |
mono |
0 |
+0.07 |
dB |
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AM は手持ちのループアンテナで調整したので、修理依頼者のループアンテナでは最高感度にならないと思います。。
使ってみました
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デザイン
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表示パネルはフィラメント電球バックライト付き LCD でオレンジ色です。
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[signal fidelity] ランプは点灯すると十分な音質で受信できることを示します。
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プリセットメモリは16局分あり、これだけあれば十分です。
長押しで 9〜16 を選択します。
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このチューナはそもそもミューティング機能がないです。
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[scan level] ボタンを長押しすると、スキャンレベル切り換えができます。
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感度と音質
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FM は4連バリキャップなので実用感度はなかなか良いです。
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FM の音質は甘めですが、良い音です。
ステレオ分離度も合格です。
普通に良い音で放送を楽しめます。
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AM の性能はごく普通です。
音はナロー気味です。