TRiO KT-1100 (3号機) が到着
2022年7月12日、千葉県香取市の S さんより
TRiO KT-1100
の修理&再調整依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
が特長のチューナです。
この写真はメータ照明の LED 化後です。
これで
オール LED 表示マシンに変身
しました!
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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十年以上メンテナンスしていません。
少し周波数ズレがあるようです。
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メンテナンスをお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [30600213] です。
電源コードの製造マーキングより、本機は1982年製とわかりました。
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フロントパネルは綺麗です。
[MODE] [IF BAND] [FM RF SEL] スイッチなどのプラスチック部分には少し黄ばみがあります。
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リアパネルは綺麗です。
端子類には実用には問題ありませんが、薄いサビがあります。
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天板は少し汚れはありますが綺麗なほうです。
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底板はまあまあ綺麗です。
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[AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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電源 ON してチェック
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2個あるメータの照明ランプがどちらも切れています。
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FM は [S メータ] [T メータ] が振れ、[STEREO] ランプが点灯して正常に受信できました。
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80.0MHz の放送が 79.7MHz 辺りで受信します。
周波数ズレが少しあるようです。
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AM は受信できましたが、[S メータ] のピークで [T メータ] がセンタにならず、この調整がズレています。
リペア
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メータの照明ランプが切れている
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メータ照明用フィラメントランプは下の左の写真のようにメータ内に実装されています。
緑色の細長いランプです。
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これを右の写真のように LED×2個 と置き換えました。
交換するにはメータを分解する必要があります。
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使用 LED は [3mm 砲弾型] [高輝度白色 1500mcd] [広照射角 60度] で、各メータに2個ずつ使いました。
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メータ組み立て&密閉には信頼性の高い耐熱ポミライドテープ (16mm 幅) を使いました。
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LED 化の回路図は下の左です。
[チューナ基板] の C162 から +20V 電圧を LED に給電します。
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結果、右の写真ように LED 化は成功しました。
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この回路で LED にはたった 4mA しか電流を流していませんが、明るさは十分です。
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この作業は大変で丸1日かかりました。
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メータを取り外す必要があるのですが、フロントパネル前面の分解だけではダメでした。
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ダイヤル板と指針レールまで外す必要がありました。
メンテナンス性が悪いです。
TRiO はランプ切れしないと思っているのか?
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分解したついでに清掃もしておきました。
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バリコン軸の接触回復
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本機は40年物ビンテージ (2022年現在) です。
バリコン軸の接触回復は必須です。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
コンタクトグリース
を塗布して防錆処置します。
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大量の緑青サビが除去できました。
結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
再調整
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電圧チェック
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以下のように良好でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
Q19-E |
+13V |
+13.4V |
〇 |
Q20-E |
-13V |
-13.3V |
〇 |
Q23-E |
+7V |
+7.06V |
〇 |
Q24-E |
-7V |
-7.02V |
〇 |
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調整結果
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KT-1100 (1号機)
に記載の手順で調整して、全て基準値内に調整できました。
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FM ステレオ時の高調波歪率は 0.008% (WIDE 1kHz) で、非常に優秀です。
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FM ステレオセパレーションなどは以下の通りで、良好です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
61 |
59 |
dB |
NARROW |
58 |
56 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-70 |
-74 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
+0.08 |
dB |
FM REC CAL 信号 |
421.9 |
Hz |
-6.0 |
-6.0 |
dB |
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AM は手持ちのループアンテナで調整しました。
使ってみました
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非常にスッキリしたデザイン
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写真より実際に見た時のほうが高級感あります。
デザインが巧妙です。
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奥行は 337mm しかなく設置が楽です。
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フロントパネルはアルミヘアライン仕上げです。
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チューニングノブは直径 46mm の無垢アルミです。
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ダイヤルスケールは正面を向いており照明はありません。
ダイヤル指針が赤い LED 表示で見易く精密感があります。
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S メータと T メータは斜め上方向きに取り付けられており、視線より低い位置に設置される前提です。
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感度や音質
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FM は TRiO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度はかなり良いです。
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やはり、パルスカウント検波の音は良いです。別格です。
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AM は高感度で S/N が高いです。
WIDE/NARROW 切り換えが有効で、WIDE 時はかなり高音が出て高音質です。
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あらためて KT-1100 は TRiO ブランドでの傑作と思いました。