どうやって測定するか検討
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オーディオアンプキットや自作アンプを製作すると、どれくらいの性能が出ているか非常に気になります。
そこで、手持ちのプアな機材で測定するにはどうしたらよいか、検討してみました。
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使用デバイスとソフトウェアの選択
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現代的手法ということで、「パソコン」とパソコンに接続する「USB オーディオデバイス」及び「計測用ソフトウェア」を使うことが思いつきます。
これであれば手持ち機材が有効活用できるし、コストも安いし、精度もある程度確保できそうです。
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USB オーディデバイスに要求される性能は周波数特性が良いこと、残留雑音が少ないこと等々です。
手持ち機材の
EDIROL UA-4FX
は「サンプリング周波数 48.0kHz = 20Hz〜22kHz(±1dB)」「残留ノイズレベル −105dBu 以下(S/N 比:108dB)」で条件を満たします。
よって、このデバイスを使うことにします。
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計測用ソフトは、フリーで高性能ということから、スペクトラムアナライズソフトの
WaveSpectra
と、信号発生ソフトの
WaveGene
に決まります。
周波数特性や歪率特性が計測できます。
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オーディオ帯域の実効電圧値が測れる高感度交流電圧計には
KIKUSUI 165A
を使います
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1.5mV〜500V のレンジがあって、5Hz〜10MHz の測定帯域があるので十分です。
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アンプのスピーカ出力に接続するダミー抵抗には
自作のもの
を使います
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検証しました
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UA-4FX の 20Hz〜20kHz 間の周波数特性を WaveSpectra と WaveGene でチェックしました。
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UA-4FX の RCA ピン入出力をループバック接続して、48kHz サンプリングで周波数特性を測定した結果を右図に示します。
このような周波数特性が自動で計測できます。
パソコンを使った測定は楽です。
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全体に若干波打っており、測定には不適です。
原因を調査すると、UA-4FX の入出力間で干渉するためと判明しました。
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UA-4FX に限らず、同一デバイスで入出力を同時に行うと干渉があり得ます。
注意しましょう。
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干渉を避けるため、パソコン内蔵のサウンドカードを WaveGene の音源に、UA-4FX を WaveSpectra の入力源と、入出力を分離して同様にやってみました。
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オッ、バッチリです。
周波数特性計測に問題なく使えそうです。
レベルも正確です。
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20kHz でストンと落ちているのは計測範囲が 20Hz〜20kHz で範囲外だからです。
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上記の測定を行うには WaveGene の設定を以下の表のようにします。
WaveGene で周波数スイープ波形を発生させ、WaveSpectra でピークホールドします。
設定項目 |
設定値 |
備考 |
サンプリング |
48000, 16bit, Stereo |
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スイープ時間 |
180秒 |
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wave1 |
サイン波 |
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20Hz |
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0dB |
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0% |
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スイープ:チェック |
右クリックして
周波数:リニア
変化量:スムーズ |
変調:チェックしない |
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L+R |
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ゲート:0 0 |
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wave2 |
サイン波 |
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20000Hz |
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0dB |
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0% |
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OFF |
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wave3 |
サイン波 |
(初期値のまま) |
1000Hz |
(初期値のまま) |
0dB |
(初期値のまま) |
0% |
(初期値のまま) |
OFF |
(初期値のまま) |
測定してみよう!
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お試しに
VP-Head KIT
のオーディオ特性を測定してみました。
測定系は右図の構成とします。
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図では 8Ω 40W のダミーロードを使うように書いてありますが、これは一般的アンプの場合です。
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VP-Head KIT には 100Ω 1W のダミーロードを使います。
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周波数特性
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HIGH インピーダンスモード / 100Ω負荷 / 100mW 出力 です。
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VP-Head KIT の周波数特性は問題なく良いです。
20Hz〜20kHz で完全フラットです。
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出力歪率特性
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HIGH インピーダンスモード / 100Ω負荷 です。
測定した実データは
これ
です。
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VP-Head KIT では 100mW までは歪率 1% 以下です。
一番よく使う数 mW 程度では歪率 0.3% 以下です。
ヘッドホンアンプとしては十分です。
真空管アンプの場合は 5% 程度までは許容できるので、300mW までは実用になります。