TRIO KT-9X

TRIO KT-9X をゲット!

2008年9月5日、私のチューナーページのファンから TRIO KT-9X の寄贈を受けました。

TRIO/KENWOOD として唯一のパルスカウント検波方式シンセサイザーチューナー です。 その実力はいかに???

まずは、外観&動作チェックしました。



カバーを開けてみました

  1. KT-9X はシステムコンポ「EXPERT シリーズ」の1つとして主にセット売りされていたチューナーです。 このことから、今まではローグレードだと思っていました。 ところが、中を覗いてみると一切の手抜きがない良い作りでした。 単体チューナーのグレードは十分あります。 定価64,800円だったので、当然かもしれませんが・・・

  2. 天板はグレーぽいビニコート鉄板ですが、なぜか裏側にも黒の塗装がされています。 底部には点検用蓋が取り付けらており、外すと基板の裏側が見え、点検しやすい構造です。

  3. 基板はチューナー基板(メイン基板)とフロントパネル基板(MCU 基板)に分かれます。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  4. 電源トランスは、チューナー基板用1個とフロントパネル基板用1個の合計2個も使われています。

  5. FM フロントエンド部は5連バリキャップ方式です。 [シングル同調]→[Dual Gate FET]→[ダブル同調]→[ミクサ Dual Gate FET]←[OSC Buffer 同調]←[OSC 同調] の構成です。 同調回路はトラッキング調整できる構成です。 シールドもしっかりしています。

  6. FM IF 部の WIDE 時の構成は [UP-CF]→[uPC1163H]→[uPC1163H]→[UP-CF]→[TR7020] です。
    NARROW 時は [UP-CF]→[uPC1163H]→ [CF]→[CF] →[uPC1163H]→[UP-CF]→[TR7020] です。

  7. FM 検波部は TRIO/KENWOOD 独自 IC の TR7020 と TR4011 を使った 第3世代のパルスカウント検波 です。

  8. FM MPX 部は HA11223W を使用しています。 WIDE / NARROW で独立したセパレーション調整ができます。 WIDE 時はセパレーションを左右別々に調整できます。 NARROW 時は左右単一調整です。 本格的なパイロット信号キャンセラー回路も内蔵しています。

  9. AM 受信部は LA1245 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。

  10. メモリバックアップは、タブ付き CR2032 型リチウムコイン電池です。 フロントパネル基板の右端にあります。 電源 OFF 時にバッテリ電圧を測ると 3.14V あったので、(2008年現在で、26年も経ったのに)まだ寿命になっていないようです。 これだけ持つのだったら、何も高価なスーパーキャパシタでなくてもよいです。

  11. IC を使用して合理化が図られています。 主な IC は以下です。


  12. 使っている部品のロット番号より、本機は1982年製造品と判りました。 電源ケーブルのマーキングも1982年です。



リペア

  1. プリセットメモリ化け
    プリセットメモリは CMOS RAM の MN1203 に記憶します。 おそらく、電源 ON 時に MN1203 にノイズが乗るためと推定しますが、原因特定は難しいです。 そこで、MN1203 の電源 VDD〜VSS 間のインピーダンスを下げる目的で、22uF 16V の電解コンデンサを追加したら現象は消えました。 この電解コンデンサを追加しても特に回路上の支障はないです。

  2. 感度低下と音質劣化
    後述の「調整」を実施することにより、完全に直りました。

  3. 全体の汚れ
    OA クリーナで汚れを落とすと、見違えるように綺麗になりました。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. FM 同調点の調整

  2. FM フロントエンドの調整

  3. FM IF 部の調整

  4. FM パルスカウント部の調整

  5. FM MPX 部の調整

  6. AM 部の調整

  7. 調整結果

    1. 特に FM フロントエンドが大きく調整ズレしていました。 再調整にて感度が大幅に上がりました。

    2. パルスカウント検波周波数が、2.10MHz と高いほうに 7% ほどズレていたので、1.96MHz に戻しました。 音質が向上しました。

    3. パルカウント検波は調整が楽で性能が出るように思います。

    4. FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。 ステレオセパレーションは、WIDE ではスペックよりも低め、NARROW ではスペック通りです。 ステレオセパレーションは、WIDE / NARROW であまり変わりませんが、NARROW では高調波歪がかなり増えるので、できるだけ WIDE で使うほうが良いです。

      項目 IF BAND L R 単位
      ステレオセパレーション WIDE 51 52 dB
      ステレオセパレーション NARROW 50 50 dB
      パイロット信号キャリアリーク - -65 -68 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) WIDE 0 0 dB



使ってみました



レベルメータ

  1. FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。 1〜5 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。

  2. これを見ると、S/N 良く受信するためには、フルレベルの必要があるようです。

  3. レベル LED 表示はスパッと切り替わる訳ではなく、電波のレベルをゆっくり上げていくと、レベル LED が「薄っすら点灯」から「点灯」に変わるような表示です。

  4. レベル3以上で MUTING 解除されます。

    アンテナ入力 (dB) 1 2 3 4 5
    〜11 × × × × ×
    12〜19 × × × ×
    20〜29 × × ×
    30〜36 × ×
    37〜44 ×
    45〜



仕様その他

  1. ドキュメント

  2. 仕様は以下です。



    その他  
    発売時期 1981年
    定価 64,800円