Lo-D FT-8000

Lo-D FT-8000 をゲット!

2015年3月15日、名古屋の S さんからシンセサイザ FM 専用チューナの Lo-D FT-8000 を寄贈していただきました。 しばらく別の趣味で忙しかったのですが、やっと2015年6月28日より手掛けました。

S さんのコメントは 「電源が入り受信はできますが表示より受信周波数がずれています。」 です。

日立が PLL シンセサイザーチューナ初号機 & フラグシップ機 として精魂込めて製作したマシンです。 作りの良さと投入物量の多さにそれを強く感じます。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. フラグシップ機なので作りは非常に良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. 以下の IC を使用して合理化が図られています。

    基板 メーカ IC 機能
    チューナ&電源基板 HITACHI HA1211 FM IF Amplifier
    HA11211 FM/AM Tuner System
    HA11223W PLL FM Stereo Demodulator with Pilot Cancel
    HA1452W 2-Channel Audio Preamplifier
    デジタル基板 NEC uPD547LC 4-bit MCU
    uPD4518C Dual 4-bit Decade Counter
    uPD2815C (PLL コンパレータでしょう)
    uPB551C 150MHz Prescaler
    S メータ基板 MITSUBISHI M51903L LED Linear Level Indicator

  3. フロントエンドは5連バリキャップ式です。

  4. IF 部は以下の構成でシンプルです。 悪くはないが良くもありません。 この構成だと高調波歪率で苦しいです。

  5. FM 検波部は [HA11211] のクォードラチュア検波です。

  6. MPX 部は [HA11223W] を使った PLL MPX です。

  7. メモリバックアップ回路がありません



修理&清掃

  1. 「電源が入り受信はできますが表示より受信周波数がずれています。」とのことでしたが確認できませんでした。

  2. 全体的に汚れが目立つ

  3. 電源コードにビニール被服破れがあって危険!



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 シンセサイザーチューナと言っても10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    基板 種別 調整ポイント 調整内容
    フロントエンド基板 L L102
    LA
    LR1
    LR3
    RF
    TC CT101
    TCA
    TCR1
    TCR3
    L LO OSC
    TC TCO
    IFT IF IF
    チューナ&電源基板 IFT T201 クォードラチュア検波 (同調点)
    VR R214 検波出力レベル
    VR R216 S メータ
    VR R229 ミューティングレベル
    VR R303 MPX VCO
    VR R308 19kHz パイロットキャンセル
    VR R356 ステレオセパレーション

  2. 電圧チェック

    基板 TP 標準値 実測値 POWER スイッチ
    との連動
    備考
    チューナ&電源基板 30V (TP19) +30V +27.67V 常に ON VT 電源
    8V (TP25) +8V +8.55V デジタル用
    5V (TP24) +5V +5.20V
    -24V (TP20) -24V -23.79V FL 用
    JP2 +14V +14.01V 連動する チューナ/AF 電源
    9V (TP14) +9V +8.77V S メータ電源
    JP8 -14V -13.80V AF 電源

  3. FM 受信部の調整

    • R214 による検波出力レベル調整は、基準値が不明のためパス(触らない)しています。

    手順 SSG周波数 SSG出力 FT-8000 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - CLOCK : OFF
    MULTIPATH : OFF
    MONO : OFF
    HI-BLEND : OFF
    REC LEVEL : OFF
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 フロントエンド基板
    LO
    フロントエンド基板
    TP8 電圧 = 3.184V
    (実測値)
    3 - - 90MHz 受信 フロントエンド基板
    TCO
    フロントエンド基板
    TP8 電圧 = 21.66V
    (実測値)
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 76MHz 30dB
    変調 : OFF
    76MHz 受信 フロントエンド基板
    L102
    LA
    LR1
    LR3
    チューナ&電源基板
    METER (TP30) 電圧 = 最大
     
    6 90MHz 30dB
    変調 : OFF
    90MHz 受信 フロントエンド基板
    CT101
    TCA
    TCR1
    TCR3
    チューナ&電源基板
    METER (TP30) 電圧 = 最大
     
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 83MHz 30dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 フロントエンド基板
    IF
    チューナ&電源基板
    METER (TP30) 電圧 = 最大
    IF 調整
    9 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    T201 コア
    チューナ&電源基板
    [TP1]〜JP22 間電圧 = 0V
    クォードラチュア検波調整
    (同調点調整)
    10 83MHz 60dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    R216
    SIGNAL メータ = 5 S メータ調整
    11 83MHz 22dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    R229
    MUTING ON/OFF 切替ギリギリに設定 MUTING レベル調整
    12 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    R303
    R303 を回して [FM STEREO] ランプが
    点灯する範囲の中間位置に設定
    MPX VCO 調整
    13 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    R308
    オーディオ出力電圧 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    14 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 1kHz
    83MHz 受信 フロントエンド基板
    IF
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 歪調整
    ±90度の範囲で調整
    15 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 チューナ&電源基板
    R356
    L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  4. 調整結果



使ってみました

  1. デザインは良好

  2. ともかく重い

  3. リアパネルの端子とスイッチ

  4. 操作ボタンやスイッチ

  5. 評価



仕様など

  1. 輸出用 Lo-D FT-8000 の回路図

  2. 仕様は以下です。

    FM チューナー部
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    実用感度 (75Ω) 0.95uV/10.8dBf
    S/N 50dB 感度 (75Ω) 25uV/39.2dBf (stereo)
    S/N 比 75dB (stereo)
    実効選択度 80dB
    全高調波歪率 (400Hz) 0.2% (stereo)
    キャプチャーレシオ 1.0dB
    イメージ妨害比 110dB
    IF 妨害比 94dB
    AM 抑圧比 60dB
    相互変調妨害比 95dB (2.5MHz)
    ステレオセパレーション 50dB (1kHz)
    アンテナ入力インピーダンス 75Ω不平衡 / 300Ω平衡
    周波数特性 20Hz〜15kHz +0.2, -0.6dB
    出力レベル 0.65V (400Hz, 100% 変調)
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 (電気用品取締法) 17W
    外形寸法 435(W)×78(H)×369(D)mm
    重量 6.1kg
    その他
    発売時期 1978年8月
    定価 75,000円