SONY ST-J55 (2号機) が到着
2022年5月27日、広島市の Y さんから
SONY ST-J55
の修理&再調整依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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SONY ST-J55 の調子がよくありません。
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FM しか使用しておりませんが、同調しレベルメータも振れるのですが、音声が歪むことがあります。
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歪む場合は、レベルメータが点滅することが多いです。
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外観
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製造シリアル番号は [230977] で、電源コードの製造マーキングより1980年製とわかりました。
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フロントパネルに薄いスレなどはありますが綺麗なほうです。
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各ボタンに緑青錆が出ています。
左右のサイドに見えるプラスチックが黄色く変色しています。
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透明アクリル板に汚れはありますが、キズやスレはありません。
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プリセット番号8の上で透明アクリル板内側にカビのような白い点がポツンとあります。
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リアパネルは綺麗です。
端子類の状態も良いです。
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天板は汚れがあって薄いキズもあります。
キズやヘコミはありません。
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底板は綺麗です。
経年並みの問題ない状態です。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、各操作ボタンもちゃんと反応します。
ディスプレイの輝度は落ちていますが、まだまだ使えそうです。
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FM 受信
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同調ズレは無さそうで、オートスキャンでき、[STEREO] ランプも点灯します。
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電波が良質で強い放送局は綺麗な音で聴けます。
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電波にマルチパスを含んだ弱い放送局は [S メータ] [STEREO] ランプが点滅し音が歪っぽいです。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
リペア
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FUSE 抵抗のチェック
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SONY のチューナでは電源ラインに FUSE 抵抗が使われています。
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これはこれで立派なのですが、FUSE 抵抗は経年変化しやすいのです。
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本機は42年物ビンテージ (2022年現在) なので、FUSE 抵抗の全数をチェックしてみました。
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結果は以下です。
問題ありませんでした。
R114 がやや経年変化していますが、この程度は大丈夫でしょう。
部品番号 |
表示抵抗 (Ω) |
実測抵抗 (Ω) |
判定 |
備考 |
R114 |
100 |
86.5 |
〇 |
フロントエンド |
R124 |
120 |
121.3 |
〇 |
LA1231N |
R209 |
100 |
99.4 |
〇 |
LA1240 |
R310 |
100 |
101.6 |
〇 |
KB4437 |
R320 |
100 |
100.3 |
〇 |
TC4066BP |
R321 |
100 |
100.6 |
〇 |
R501 |
10 |
10.2 |
〇 |
電源 |
R502 |
1k |
1.01k |
〇 |
R504 |
10 |
10.2 |
〇 |
R505 |
820 |
820 |
〇 |
R507 |
39 |
38.8 |
〇 |
R508 |
820 |
823 |
〇 |
R510 |
39 |
37.7 |
〇 |
R511 |
820 |
822 |
〇 |
R513 |
39 |
38.6 |
〇 |
R514 |
820 |
821 |
〇 |
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FM 受信で、レベルメータが点滅し音声が歪む
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我が家では現象再現しないので修理依頼者に再確認しました。
結果、マルチパス妨害の可能性が高いです。
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後述の再調整でフロントエンドなどが大きくズレていることが確認できました。
調整ズレているとマルチパス妨害に弱くなります。
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今回の再調整でたぶん直った (軽減された) と思います。
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AM 受信で、感度が低下している
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再調整で感度は大幅に上がりました。
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でも、本機の AM はそう感度が高い訳ではありません。
AM は使っていないらしいので、これでも十分かと。
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透明アクリル板内側にカビのような白い点がポツンとある
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フロントパネルを分解して清掃し、白い点が取れました。
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内部清掃もしたので、煤のようなゴミが取れディスプレイがクッキリ見えるようになりました。
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各ボタンに緑青錆が出ている
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ヘラと爪楊枝で丹念に緑青錆を除去しました。
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錆がメッキ内部まで浸透している部分は取り切れませんでしたが、ほぼ綺麗になりました。
新品時の 70〜80% 程度の輝き。
再調整
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電圧チェック
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以下のように良好です。
VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW93 |
+30V |
+31.6V |
〇 |
VT |
JW89 |
-30V |
-31.4V |
〇 |
FLD |
JW49 |
+15V |
+15.5V |
〇 |
チューナ全般 |
JW35 |
+5V |
+5.26V |
〇 |
デジタル |
JW44 |
-5V |
-5.18V |
〇 |
FLD |
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調整結果
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ST-J55 (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
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FM フロントエンドが大きく調整ズレしていました。
再調整で感度アップしました。
マルチパス妨害にも強くなったはず。
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FM 同調点電圧は 390mV (0±10mV が基準) とズレていました。
これが大きくズレると同調周波数ズレや受信不安定になります。
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FM ステレオ時の高調波歪率は 0.13% とまずまずです。
IF BAND を WIDE/NARROW 切換できない機種としては優秀です。
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FM スレテオセパレーションは調整前は 30dB 台だったのが、調整で以下のように素晴らしい値になりました。
項目 |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
69 |
60 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
-72 |
-73 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
0 |
dB |
REC CAL |
419.9 |
Hz |
-5.6 |
-5.6 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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SONY デザインなので、機能美と暖かさを感じます。
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局名バーに入れる
局名パネルを自作する
ことをお奨めします。
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プリセットメモリ
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FM/AM ランダムに8局分プリセットできます。
ちょっと少ないです。
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メモリには
不揮発性メモリチップ
を使っています。
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周波数アップ/ダウン用ボタン
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[AUTO TUNING] 用と [MANUAL TUNING] 用の2組あって
使いやすい
です。
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感度と音質
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FM の [感度] [セパレーション] [音質] は良いです。
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クォードラチュア検波では甘ったるくて眠い音のチューナが多いです。
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本機ではクォードラチュア検波にも関わらず、そういうことはなく、SONY らしい解像度感のある音です。
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AM アンテナにバーアンテナが使われており、感度はまあまあです。
音質も良いほうです。