SONY ST-J75 (4号機) が到着
2023年4月27日、岩手県一関市の S さんより
SONY ST-J75
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
ヤフオクで入手しました。
最近、表示不安定のためお蔵入りになっていました。
修理と調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [203025] で、電源コードの製造マーキングより [1980年製造品] とわかりました。
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フロントパネルのあちこちに小キズがあります。
リアパネルは綺麗で、端子類に輝きが残っています。
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天板にはあちこちに線キズがありますが、致命的な変形はないです。
底板は綺麗なほうです。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、FL 表示器は新品同様の輝度があります。
各ボタンも正常に反応します。
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特に問題なく FM/AM とも受信します。
[STEREO] ランプも点灯します。
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周波数が低い放送局ではやや感度が落ちている感じですが、周波数が高い周波数では大きく感度低下しています。
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カバーを開けてチェック
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基板は綺麗で、目視では特に大きな問題なさそうに見えます。
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いくつかの IC の足が黒ずんでいます。
リペア
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表示不安定 ・・・ 修理依頼者より
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表示不安定とはどの表示が不安定なのかわかりません。
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少し調整してみて、FM フロントエンドの VT 電圧が 90MHz で 10V しかありません。
ここは 19V が正しいです。
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「表示不安定」は、これが原因だと思います。
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更に調べると OSC トリマコンデンサの容量が完全に抜けており、回しても VT 電圧に変化がありません。
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OSC コイルのほうで VT 電圧を調整してみたら、なんとか正常範囲に入りました。
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よって、今回はトリマコンデンサは交換せず、調整で合わせることにして直りました。
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「周波数が高い周波数では大きく感度低下している」も一緒に直りました。
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いくつかの IC の足が黒ずんでいる
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黒くなっているのはマイグレーションと呼ばれる金属カビのようなもので、IC のピン間を短絡して誤動作させます。
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黒ずんでいるのは、IC102 (HA1202), IC201 (NJM4560D), IC203 (HA11223W]), IC204 (NJM4560D), IC301 (LA1245), IC502 (CX761A), IC504 (TMS1024NLL) です。
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ST-J75 (3号機)
では IC504 (TMS1024NLL) のマイグレーションで [ほぼ全てのランプが薄く点滅する] 不具合が出ていました。
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IC を取り外さないで、基板上からエレクトロニッククリーナと歯ブラシを使って洗浄しました。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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以下のように全て正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
Q601-E |
+15V |
+15.9V |
〇 |
Q604-E |
-5V |
-5.07 |
〇 |
Q605-E |
+5V |
+5.03V |
〇 |
Q606-E |
+5V |
+5.01V |
〇 |
Q607-E |
-30V |
-31,2V |
〇 |
Q608-E |
+30V |
+31,5V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM は [フロントエンド] が大きく調整ズレしていました。
その他にも調整ズレがありました。
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FM は再調整にて、以下の良好な特性になりました。
項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
61 |
59 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.064 |
% |
stereo |
0.064 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-62 |
-62 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
mono |
398.4 |
Hz |
-6.0 |
dB |
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AM は修理後、[フロントエンド] [IF] を再調整して良好になりました。
使ってみました
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素晴らしいデザイン
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フロントパネルにヘアラインアルミ材を使用しており、高質感です。
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放送局のプリセット数が FM/AM 合わせて8局分あります。
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不揮発性メモリを使っており、バッテリなどのバックアップ不要です。
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AM はリアパネルに取り付けられたバーアンテナで受信します。
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MUTING OFF にすると AM ノイズフィルタが ON になります。
高域は落ちますが、雑音が多い時は有効な機能です。
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感度と音質
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感度が良く、ローカル放送を良音で聴けます。
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FM の音質は、音に解像度があり、高域がクリアで、素晴らしいです。
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AM の音質もなかなか良好です。