SONY ST-JX310

SONY ST-JX310 をゲット!

2015年7月7日、SONY ST-JX310 を豊橋市の K さんより研究用として寄贈いただきました。 7月4日に ハードオフ 豊橋店で税込324円だったとのこと。

電網検索で輸出用 ST-JX310 の存在は確認できましたが、 日本国内用 ST-JX310 は存在しなかった という結論に至りました。 こんなものがどうしてハードオフにあったのだろう???

リアパネルの型式シールに SERIAL NO. の記載が無く、代わりに [非売品 NOT FOR SALE] シールが貼ってあります。



怪しいマシン ・・・ いったいどこから来たのだろう???



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. 以下の IC を使用して合理化が図られています。

    メーカ IC 機能
    SANYO LA1231N FM IF System
    LA1245 AM Electronic Tuner
    LA3390 PLL FM MPX Demodulator with Post Amplifier
    TOSHIBA TC9172P High Speed PLL with Built-In Prescaler
    TC9302F Digital Tuning System (MCU)

  3. FM フロントエンドは3連バリキャップ式です。 トリマコンデンサがないので、コイルによる1点トラッキング調整しかできません。

  4. FM IF 部は以下の超シンプルな構成です。

  5. FM 検波部は [LA1231N] のクォードラチュア検波です。

  6. MPX 部は [LA3390] を使った PLL MPX です。

  7. AM 受信部は [LA1245] で全てを構成します。 AM フロントは2連バリキャップ式で、こちらは2点トラッキング調整できます。

  8. プリセットメモリのバックアップは CR2032 リチウムコイン電池で行います。



修理&清掃

  1. [STEREO] ランプが点灯しない。

  2. 電源 OFF にして10分くらいでプリセット情報が消える。

     

  3. 全体的に手垢のような汚れが目立つ。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    基板 種別 調整ポイント FM/AM 調整内容
    FM フロントエンド L L102
    L104
    FM RF
    L L106 OSC
    IFT IFT101 IF
    チューナ基板 IFT IFT201 クォードラチュア検波 (同調点)
    IFT IFT202 クォードラチュア検波 (歪率)
    VR RT201 ミューティングレベル
    VR RT301 MPX VCO (19kHz)
    VR RT302 ステレオセパレーション
    L T406 AM RF
    TC CT406
    L T403 OSC
    TC CT403
    IFT IFT401 IF


  2. 電圧チェック

    TP 標準値 実測値 備考
    Q501-E +14.3V +14.48V アナログ電源
    Q502-E +5.6V +5.59V デジタル電源

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-JX310 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    MUTING : ON
    - -  
    2 - - 90MHz 受信 フロントエンド
    L106
    フロントエンド
    VT 電圧 = 8.66V
    VT high
    (実測値)
    3 - - 76MHz 受信 - フロントエンド
    VT 電圧 = 2.475V
    確認のみ
    (実測値)
    4 83MHz 30dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 フロントエンド
    L102
    L104
    IFT101
    SM 電圧 = 最大 RF&IF 調整
    5 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 IFT202 オーディオ出力 = 高調波歪最小 (歪率調整)
    6 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 IFT201 チューナ&電源基板
    TP1 間電圧 = 0V
    (同調点調整)
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す クォードラチュア検波調整
    8 83MHz 22dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 RT201 MUTING ON/OFF 切替ギリギリに設定 MUTING レベル調整
    9 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 RT301 RT301 を回して [STEREO] ランプが
    点灯する範囲の中間位置に設定
    MPX VCO 調整
    10 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 1kHz
    83MHz 受信 フロントエンド
    IFT101
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 歪調整
    ±90度の範囲で調整
    11 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 RT302 L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-JX310 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : AM - -  
    2 - - 531kHz 受信 T403 VT 電圧 = 1.132V VT low (実測値)
    3 - - 1602kHz 受信 CT403 VT 電圧 = 10.96V VT high (実測値)
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 603kHz 変調 : 1kHz
    出力 : 40dB
    603kHz 受信 T406 オーディオ出力電圧 = 最大  
    6 1404kHz 変調 : 1kHz
    出力 : 40dB
    1404kHz 受信 CT406 オーディオ出力電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 999kHz 変調 : 1kHz
    出力 : 40dB
    999kHz 受信 IFT401 オーディオ出力電圧 = 最大 IF 調整

  5. 調整結果

    項目 L R 単位
    ステレオセパレーション 49 49 dB
    パイロット信号キャリアリーク (19kHz) -31 -31 dB
    オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 +0.02 dB



使ってみました

  1. デザインは良好

  2. リアパネルの端子

  3. 操作ボタンやスイッチ

  4. 評価



仕様など

  1. 輸出用 ST-JX310L のサービスマニュアル

  2. 仕様は以下です。

    FM チューナ部
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    IF 周波数 10.7MHz
    実用感度 (75Ω) 0.9uV/10.3dBf
    S/N 50dB 感度 (75Ω) mono : 2uV/17.3dBf
    stereo 22.5uV/38.3dBf
    実効選択度 65dB (400kHz)
    キャプチャーレシオ 1.0dB
    AM 抑圧比 54dB
    イメージ妨害比 50dB
    IF 妨害比 90dB
    スプリアス妨害比 70dB
    相互変調妨害比 60dB (IHF)
    S/N 比 mono : 82dB
    stereo : 77dB
    全高調波歪率 (1kHz) mono : 0.15%
    stereo : 0.3%
    ステレオセパレーション 45dB (1kHz)
    周波数特性 40Hz〜12.5kHz ±0.5dB
    30Hz〜15kHz +0.5, -2.0dB
    ミューティング
    スレッシュホールドレベル
    5uV/25dBf (75Ω)
    アンテナ入力インピーダンス 75Ω不平衡 / 300Ω平衡
    出力レベル/インピーダンス 550mV/3.3kΩ (100% 変調)
    AM チューナ部
    受信周波数範囲 531〜1602kHz
    IF 周波数 450kHz
    実用感度 (999kHz) 300uV/m (バーアンテナ)
    30uV (外部アンテナ)
    実効選択度 35dB (9kHz)
    S/N 比 54dB (50mV/m)
    全高調波歪率 (400Hz) 0.3% (50mV/m)
    総合
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 (電気用品取締法) 8W
    外形寸法 430(W)×55(H)×270(D)mm
    重量 2.9kg
    その他
    製造時期 1983年
    定価 (非売品のため不明)