Trimble ThunderBolt

10MHz 基準周波数発生器の製作

2009年10月10日、GPS (Global Positioning System:全地球測位システム) 時刻を校正クロックとする 10MHz 基準周波数発生器を製作しました。

GPS 衛星からは GPS 時刻という超正確な時刻情報が発信されており、GPS 衛星に搭載されている原子時計の精度とほぼ一致します。 この GPS 時刻から得られる 1PPS (1秒間に1個のパルス信号) も同じ精度があります。

正確な 10MHz OCVCXO (Oven-Controlled Voltage-Controlled X'tal Oscillator:恒温槽付電圧制御水晶発振器) を準備し、これを 1PPS で PLL ロックすると GPS クロックの精度と同等の 10MHz 信号が作成できます。 この原理を使った業務機用マスタークロックシステムは超高価で、安いものでも2百万円はします。

高精度な OCVCXO を製作するのはアマチュアでは困難です。 そこで Trimble ThunderBolt という OCVCXO 付の業務機用 GPS 同期 10MHz 発振器の中古を入手しました。 ThunderBolt は中国の携帯電話の基地局で使われていたようで、システム更新時期となった2008年秋頃から大量に中古市場に出回っています。

超正確なマスタークロックがなぜ必要なの? は愚問です。
業務用デジタルオーディオシステムなどのプロ用機器の世界では、同期を正確に取るために高精度基準クロック(マスタークロック)が必要です。 誤差や変動のある周波数でサンプリングすると録音と再生のピッチが狂ってしまいます。 プロスタジオには必ずこのようなマスタークロックシステムが設置されているはずです。



主要部品

  1. Trimble ThunderBolt

  2. 電源ボード

  3. ケース

  4. 小物



製作しました

  1. 製作したと言っても ThunderBolt と電源ボードの配線をしただけです。 たったこれだけです。

  2. 電源ボードは T-600 ボスを ThunderBolt の上に4個貼り付け、そのネジ穴にネジ止めしてあります。 本当は T-600 ボスを電源ボードに先にネジ止めし、次にそのまま ThunderBolt に貼り付けました。 こうすれば、電源ボードとボスの位置合わせは必ず成功します。

  3. ケースの加工は「ThunderBolt のコネクタ用の長方形穴」「AC100V 電源コードの丸穴」の2個の穴を開けただけです。 丸穴はドリルとリーマで、長方形穴はハンドニブラで加工しました。 ハンドニブラを握るのは10年ぶりくらいかな?

  4. 最初は 10MHz 出力の分配器を入れようかと思いましたが、こうすると、せっかく ThunderBolt が備えているコネクタ類がケース内部で無駄になってしまいます。 で、ThunderBolt のコネクタ類をそのままパネルに出すことにしました。

  5. 電源スイッチとパイロットランプはどうしよう ・・・ などと考えましたが、こういう基準器は電源を入れたら長時間切ることは考えられません。 従って、必要性がないので何にも追加しませんでした。



屋外 GPS アンテナの製作と設置

  1. 主要部品

  2. 屋外設置のための主な部品

    上記の GPS アンテナは自動車の屋根に設置するタイプなので、元々防水性があると思いますが、じっくり構造をチェックすると防水の面でイマイチ心配です。 固定アンテナは 雨ニモマケズ・風ニモマケズ ノーメンテナンスで動いてほしいです。 一度設置したら手間がかからないのがよいです。

  3. 屋外設置しました



サポートソフト



使ってみました

  1. 右の写真がフロントパネルです ・・・ と言っても何にも取り付けていないのでノッペラボウです。

  2. OCVCXO を使っているので、高精度を得るにはオーブンが十分温まる時間や制御電圧が安定するウォーミングアップ時間が必要です。

    1. 電源 ON 5分で 10-9 以上の精度になりました。 この精度があれば ADVANTEST TR5822 などの8桁周波数カウンタの基準クロックとして十分使えます。 この時点ではまだ OCVCXO の温度が上昇中で安定していません。

    2. 電源 ON 1時間で 5×10-11 程度の精度になりました。 この辺りが ThunderBolt の短期精度と思います。 OCVCXO のオーブン温度は35〜40℃程度になります。

      • スペックの [1.16×10-12/日] の精度というのは、おそらく、この状態での1日の平均値と思います。 過度の期待は禁物です。

      • しかしながら、10-11 台の短期精度であってもアマチュアには必要十分な超高精度です。

    3. 「サポートソフト」で書いた [Stored Position] 設定しておくと、2の状態になる時間を大幅短縮できます

      • Self-Survey が不要になるので、数分でロック完了します。 ただし、OCVCXO のオーブン温度が十分上がっていないと精度が出るのに更に時間がかかります。 ThunderBolt の電源が瞬断したケースではすぐに精度が出ます。

      • 同時に GPS 衛星捕捉3個でもロックできるようになります。 [Stored Position] 設定していないと GPS 衛星捕捉4個必要です。

      • GPS アンテナ位置を固定して使うなら、[Stored Position] 設定しておくのがお奨めです。

  3. 右の写真が実際に使っている状態です。

  4. その他



ドキュメント