TRiO KT-2200 (3号機) が到着
2023年6月26日、宮城県大崎市の A さんから
TRiO KT-2200
の修理依頼品が到着しました。
FM 専用バリコン式高級チューナ
です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ヤフオクで購入したもので、チューニングの指針が見えなくなっていたのは直しました。
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電源回路のコンデンサと他の少しのコンデンサは交換してあります。
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フロントエンドのトリマコンデンサは大丈夫のようですが、調整のズレが大きいです。
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[METER] スイッチのキャップは付いていません。
ここは修理不要です。
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多分交換が必要な部品はないような感じです。
よろしくお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [30900373] で、電源コードの製造マーキングより [1982年製造品] とわかりました。
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汚れはありますが全体的には綺麗です。
[METER] スイッチの飾りトップが無くなっているのが残念です。
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周波数目盛板の左側が浮き上がっています。
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ここの修理は修理依頼者でもできると思うので、私のほうでは対策しません。
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[目盛板を取り外し]→[両面テープの除去]→[目盛板の歪み修正]→[両面テープで再度取り付け] の手順になろうかと思います。
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電源 ON してチェック
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全てのスイッチ、ボリューム操作は正常そうです。
同調ノブの動きはスムーズです。
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受信できますが [S メータ] のピークと [T メータ] のセンタが合いません。
同調点ズレしているようです。
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同調点ズレが原因と思われる以下の不具合があります。
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MUTING ON では音が出ず、[STEREO] ランプも点灯しません。
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サーボロック機能が動作していません。
[D メータ] が全く振れません。
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上記のため、モノラル音しか出ませんが、音はそう悪くないです。
再調整で良くなると思います。
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[REC CAL] スイッチ ON で録音用テストトーンが正常に出ます。
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カバーを開けてチェック
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カバーを開ける時に気が付いたのですが、サイドから留める4本のタップネジが変?
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まず、長さが長過ぎです。
そして3種類のタップネジで留められています。
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私のほうでは対策しませんが、適正なタップネジと4本とも交換することをお奨めします。
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内部は綺麗で、修理依頼者のほうでやられた電解コンデンサや指針ランプ交換の部分も綺麗です。
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バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっています。
脱落するとギア機構がバラバラになります。
対策が必要です。
リペア
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バリコン軸の接触不良回復
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本機ではまだ発生していませんでしたが、[同調ノブ動作で受信音にガサゴソ雑音が入る] の現象が出ます。
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本機は41年物ビンテージ (2023年現在) です。
バリコン軸の接触不良回復はやるべきです。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
CRC 5-56
を塗布して防錆処置します。
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結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
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同調点ズレしている
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直接的には [L26] を調整すれば同調点ズレは直りますが、歪率性能の観点からは IF 部も一緒に調整する必要があります。
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再調整で直り、同時に以下の現象も直りました。
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MUTING ON では音が出ず、[STEREO] ランプも点灯しない。
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サーボロック機能が動作していいない。
[D メータ] が全く振れない。
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バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっている
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右の写真の矢印で示したプーリー軸の隙間です。
隙間がないのが正しいです。
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プーリー軸の隙間が広がるとギア機構に遊びが生じるため、バックラッシュが大きくなり、ダイヤル指針の誤差が大きくなります。
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最悪、プーリー軸が脱落するとギア機構がバラバラになります。
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本機のようにプーリーがエンド端になる糸掛け機構で問題が出ます。
プーリーを糸が左右から支えている糸掛け機構では問題は出にくいです。
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対策するか確認すると、修理依頼者のほうでやるとのことで、私のほうでは対策していません。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
Q42(2SD330)-E |
+12V |
+12.1V |
〇 |
IC23(7908)-OUT |
-8V |
-7.85V |
〇 |
IC24(7808)-OUT |
+8V |
+8.06V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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(L-03T と全く同じなので)
L-03T
の調整手順で再調整しました。
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調整結果
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IF 回路のほとんどの IFT がめちゃくちゃズレていました。
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再調整前は [FM IF SEL] DIRECT では S メータが僅かしか振れていませんでしたが、調整後はこのモードでも使えるようになりました。
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同時に音質が大きく向上しました。
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[ステレオセパレーション] [高調波歪率] [パイロット信号キャリアリーク] は以下の優秀な数値になりました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
52 |
50 |
dB |
NARROW |
45 |
45 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.030 |
% |
stereo |
0.030 |
% |
NARROW |
mono |
0.078 |
% |
stereo |
0.078 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-86 |
-80 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
445.3 |
Hz |
-6.6 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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性能的には L-03T と全く同じで、外観もほぼ同じです。
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L-03T のパネルはブラックですが、KT-2200 のシルバーも良いです。
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L-03T にはある [Σドライブ出力端子] がありません。
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ダイヤル指針が赤い LED 表示で見易く、精密計器の雰囲気さえあります。
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アンテナ入力は F 端子だけなので、雑音電波が混入しないです。
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感度や音質
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このクラスになると流石に良い
です。
感度が良く、高解像度でカチッとした超高音質です。
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高域も低域もよく出ています。
S/N も良いです。
性能は超一流です。
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やはり、
ノンスプクトラム IF システム
の威力は凄いです。