KENWOOD L-03T

KENWOOD L-03T をゲット!

2010年12月24日、私のチューナページのファンから KENWOOD L-03T の中古品をクリスマスプレントされました。

本機は一応ワンオーナーとのことです。 一応というのは、しばらく親戚に貸しておいたらキズだらけになって戻ってきたとのことで、 準ワンオーナー と言うべきかもしれません。 内部はいじられた形跡がなく、非常に状態が良いです。

KENWOOD 最後の FM 専用アナログチューナ です。



L-03T の兄弟



状況チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 非常に良い作りです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. フロントエンド

  3. ノンスペクトラム IF システム

  4. 検波部

  5. MPX 部

  6. IC を使用して合理化が図られています。

    メーカ IC 機能
    FUJITSU MB84066B Quad Analog Switch/Multiplexer (4066B と同じ)
    JRC NJM1496 バランスド・変調/復調用回路
    NJM2043 2回路入り低雑音プリアンプ
    NJM4558 2回路入り汎用オペアンプ
    NJM4560 2回路入り汎用オペアンプ
    NEC uPC1163H FM IF アンプ
    uPC1198H FM IF アンプ
    TRIO-KENWOOD TR7040 Sample & Hold PLL MPX

  7. 使用 IC のロット番号より、この L-03T は1982年製と判明しました。 電源ケーブルのマーキングも1982年でした。 L-03T の発売は1983年1月なので、本機は初期ロットと思われます。



修理&クリーニング



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整手順

    手順 SSG出力 L-03T の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - REC CAL : OFF
    MODE : AUTO ST
    FM RF SEL : DISTANCE
    LOCK : OFF
    - -  
    2 83MHz
    90dB
    無変調
    83MHz 付近の
    S メータ最大位置に
    指針を合わせる

    IF BAND : NARROW
    L20 R16 (1kΩ) 左側 = 6.2MHz
    周波数カウンタで測定
    Non-Spectrum IF System
    VCO 調整
    3 L25 R87 (1kΩ) 左側 = 波形最大
    オシロスコープで観測
    PLL 検波調整
    4 L26 T メータ = センタ
    5 83MHz に指針を合わせる
    IF BAND : NARROW
    フロントエンド内
    OSC トリマ
    OSC トラッキング調整
    6 83MHz
    30dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    フロントエンド内
    RF トリマ×3
    OSC Buffer トリマ
    IFT
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    7 L4
    L5
    L8
    L9
    L10
    L14
    L15
    L16
    L17
    IF 調整
    8 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    VR6 下の [VCO 調整手順] を参照 MPX VCO 調整
    9 VR5
    L37
    オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    10 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    L4
    L5
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 IF 歪補正
    (MONO)
    11 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    L9
    L10
    L11
    L12
    IF 歪補正
    (STEREO WIDE)
    12 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    L14
    L15
    IF 歪補正
    (STEREO NARROW)
    13 83MHz
    40dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    - S メータ = 測定 NARROW GAIN 調整
    14 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    VR1 S メータ = 手順13と同一
    15 83MHz
    60dB
    無変調
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    VR3 S メータ = 4.25 S メータ調整
    16 83MHz
    90dB
    mono 400Hz
    VR4 D メータ = 100% D メータ調整
    17 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R
    VR7 L ch. オーディオ出力 = 最小 WIDE
    セパレーション調整 (L)
    18 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L
    VR8 R ch. オーディオ出力 = 最小 WIDE
    セパレーション調整 (R)
    19 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    VR9 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 NARROW
    セパレーション調整

  2. 調整結果



使ってみました

  1. デザイン

  2. 機能関連

  3. 感度や音質

  4. 素晴らしいです。 バリコン式でこんなに性能と安定度があるチューナは初めてです。 私の評価は ◎++ です。

    • バリコン式はシンセサイザー式に性能で劣るのが普通です。
    • バリコン式は設計が古いのでシンセサイザー式に回路方式や安定度で劣るのが普通です。
    • シンセサイザー式は最良調整点が簡単に見つかりますが、バリコン式は調整がピタッと決まらず曖昧になりがちです。
    • 従って、私はバリコン式が嫌いなのです。
    • L-03T はこれまでの私の常識を覆す完成度があります。
    • ノンスペクトラム IF システムを採用したシンセサイザー式チューナが出現していたら最高だったと思います。



予備パーツ



仕様その他

  1. L-03T 取扱説明書

  2. L-03T 回路図

  3. L-03T に関する文献を探してみましたが、電網上には有益な情報が見つかりません。 兄貴分の L-02T の情報は結構ヒットします。 以下は L-02T の情報ですが、回路構成の理解と調整手順の推測に役立ちます。

  4. L-03T の仕様は以下です。

    FM チューナー部  
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡
    感度 (75Ω) Distance : 0.9uV (10.3dBf)
    Direct : 4.0uV (23.3dBf)
    S/N 比 50dB 感度 (75Ω) Distance mono : 1.7uV (15.9dBf)
    Direct mono : 5.0uV (25.2dBf)
    Distance stereo : 20uV (37.3dBf)
    Direct stereo : 60uV (46.8dBf)
    高調波歪率 (100% 変調) WIDE mono : 0.005%(100Hz), 0.005%(1kHz), 0.04%(6kHz), 0.02%(15kHz), 0.04%(50Hz〜10kHz)
    WIDE stereo : 0.02%(100Hz), 0.015%(1kHz), 0.04%(6kHz), 0.2%(15kHz), 0.09%(50Hz〜10kHz)
    NARROW mono : 0.007%(100Hz), 0.05%(1kHz), 1.3%(6kHz), 0.03%(15kHz), 1.3%(50Hz〜10kHz)
    NARROW stereo : 0.1%(100Hz), 0.1%(1kHz), 0.3%(6kHz), 2.0%(15kHz), 0.7%(50Hz〜10kHz)
    S/N 比
    (100% 変調, 85dBf 入力)
    mono : 96dB
    stereo : 86dB
    キャプチャーレシオ WIDE : 0.8dB
    NARROW : 2.0dB
    実効選択度 WIDE : 40dB (±400kHz)
    NARROW : 55dB (±300kHz)
    ステレオセパレーション WIDE : 60dB(1kHz), 47dB(50Hz〜10kHz), 40dB(15kHz)
    NARROW : 47dB(1kHz), 35dB(50Hz〜10kHz)
    周波数特性 15Hz〜15kHz ±0.5dB
    イメージ妨害比 90dB
    IF 妨害比 120dB
    スプリアス妨害比 110dB
    AM 抑圧比 75dB
    サブキャリア抑圧比 75dB
    レックキャリブレーション 440Hz (50%変調)
    出力レベル/インピーダンス
    (1kHz, 100%変調)
    固定出力 : 0.6V/2kΩ
    Σ出力 (可変) : 1.2V/1Ω以下
    マルチパス出力 垂直出力 : 0.1V/10kΩ
    水平出力 : 0.7V/10kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 (電気用品取締法) 11W
    外形寸法 440(W)×111(H)×337(D)mm
    重量 5.4kg
    その他  
    発売時期 1983年1月
    定価 120,000円