YAMAHA T-2 (3号機) が到着!
2023年1月6日、岡山県総社市の A さんから
YAMAHA T-2
の修理依頼品が到着しました。
FM 専用機
で定価13万円の高級チューナです。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
7〜8年前に入手し、FM を普通に受信できているのですが、再調整等をお願いします。
-
ランプ類が切れたため、オーディオ店に修理に出し照明を LED 化しました。
-
電解コンデンサ等の部品交換については、状態を見ていただいて、必要があればお願いします。
-
外観
-
製造シリアル番号は [03435] で、電源コードの製造マーキングよりは製造年は不明でした。
-
かなり綺麗な状態で、キズやスレはほぼありません。
-
リアパネルの端子類に薄い錆が出ていますが、赤錆ではないので問題なさそうです。
-
[S メータ] [T メータ] の指針に塗装ハゲがあります。
メータ内に剥げ落ちた塗料ゴミが見えます。
-
電源 ON してチェック
-
電源が入り、照明ランプ切れはありません。
周波数表示器と操作ボタンは良好です。
-
良好に受信できましたが、[STEREO] ランプがチラチラと明るくなったり暗くなったりします。
-
音の強弱に同期して明るさが変わっているように思います。
音が大きいほど暗くなる。
-
明るさは変わっていてもステレオ感があって音は正常です。
-
ダイヤル照明は LED 化されているらしいですが、よく見るとチラツキがあります。
-
ダイヤル指針の周波数ズレは感じられず良好です。
-
カバーを開けてチェック
-
ほぼ密閉構造のため、内部は非常に綺麗です。
目視で劣化がみられる部品は無さそうに思いました。
-
使用 IC のロット番号より、本機は [1977年製造品] とわかりました。
リペア
-
[STEREO] ランプがチラチラと明るくなったり暗くなったりする
-
主な原因は調整ズレして感度が下がっていたためでした。
-
S メータのレベルが下がると、AUTO BLEND が掛かると同時にその深さによって、[STEREO] ランプがチラつきます。
-
この動作は仕様みたいで、故障ではありません。
ご安心ください。
-
[AOTO BLEND] スイッチを OFF にすると、[STEREO] ランプが点灯したままになります。
-
調査のため [LA3350] を IC ソケット化して交換しても現象が変わらないことより、回路図を見直して仕様とわかりました。
-
ダイヤル照明にチラツキがある
-
下の左の回路図はランプ関連部分です。
-
ダイヤル照明ランプは PL2 端子に接続されています。
-
オーディオ店での照明 LED 化では、単純に [フィラメントランプ]→[LED] しただけのようです。
-
このため、ダイヤル照明 LED は半波整流のまま駆動しているのでチラつくのです。
-
ダイヤル指針とメータの照明は PL1 端子に接続されています。
-
こちらは 100uF の電解コンデンサで平滑されているので、チラつかないのです。
-
下の右の写真のように、PL2 端子に電解コンデンサ [47uF/35V] を基板の裏側で追加しました。
-
チラツキがなくなって少し明るくなりました。
手直し完了!
-
電解コンデンサ交換 ・・・ 予防保守
-
交換方針
-
電源部の電解コンデンサは常に熱にさらされているので劣化しやすく、この部分は全部交換します。
-
MPX 部の電解コンデンサが容量抜けするとステレオ分離性能が悪化するので、この部分は全部交換します。
-
T-2 ではオーディオ回路が DC アンプ構成になっていて、そもそもこの部分に電解コンデンサはほとんど使われていません。
-
オーディオ回路では唯一最終段 (RCA 端子の手前) にバイポーラ電解コンデンサがあり、これを交換します。
-
交換リスト
-
交換数が多くて大変でした。
-
電源用の電解コンデンサは音にはほとんど影響せず、信頼性を上げるため 105℃ 仕様を使いました。
-
音に影響する MPX、オーディオ部位には高周波特性の優れた積層セラミックまたはオーディオグレード品を使いました。
部位 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
MPX |
C250 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C253 |
0.22uF/50V (85℃) |
0.22uF/50V (積層セラミック) |
|
C254 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
C257 |
1uF/25V (85℃) |
1uF/50V (積層セラミック) |
|
電源 |
C265 |
1000uF/10V (85℃) |
1000uF/10V (105℃) |
|
C266 |
1000uF/10V (85℃) |
1000uF/10V (105℃) |
|
C267 |
100uF/6.3V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
|
C269 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
PL1 端子ランプ電源 |
C270 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/35V (105℃) |
|
C271 |
100uF/25V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C272 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/35V (105℃) |
|
C273 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/35V (105℃) |
|
C274 |
100uF/25V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C275 |
47uF/25V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
|
C276 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/35V (105℃) |
|
C277 |
470uF/25V (85℃) |
470uF/35V (105℃) |
|
C278 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
|
C279 |
100uF/35V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C280 |
100uF/35V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C281 |
220uF/16V (85℃) |
220uF/35V (105℃) |
|
C282 |
10uF/25V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
|
C283 |
1uF/25V (85℃) |
1uF/50V (積層セラミック) |
|
C284 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/35V (105℃) |
|
C286 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
|
C287 |
1uF/25V (85℃) |
1uF/50V (積層セラミック) |
|
オーディオ |
C427 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
|
C428 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
|
C431 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
|
C432 |
3.3uF/16V (BP) |
3.3uF/50V (MUSE/ES) (BP) |
|
-
交換後の記録写真
-
電源部です。
左の写真は交換前、右の写真は交換後です。
-
薄青い大きな電解コンデンサが黒い小さな電解コンデンサに変わりました。
-
小さくなって風通しが良くなったのと、105℃製品使用で、信頼性が上がります。
-
MPX 部です。
左の写真は交換前、右の写真は交換後です。
-
薄青い大きな電解コンデンサが青い小さな積層セラミックと黒い小さな電解コンデンサに変わりました。
-
積層セラミックコンデンサにしたので、信頼性が上がります。
-
オーディオアンプ基板です。
左の写真は交換前、右の写真は交換後です。
-
薄青いバイポーラ電解コンデンサが緑色のバイポーラ電解コンデンサに変わりました。
-
緑色のバイポーラ電解コンデンサには MUSE/ES オーディオ用を使っています。
-
ハンダクラック対策 ・・・ 予防保守
-
T-2 のコネクタはピンヘッダ構造になっており、長〜いピンに対してハンダ付け部分が極小です。
-
極小ハンダ付け部分にケーブルからストレスがかかり、ハンダクラックがおこりやすいです。
-
該当する CN#4, CN#5, CN#6 コネクタを補修ハンダ付けしました。
-
[S メータ] [T メータ] の指針に塗装ハゲがある
-
左の写真は目盛カバーを外した T メータの再塗装前です。
S メータも同様でした。
-
塗装膜がボロボロで、軽く擦るだけで全ての塗装が剥げ落ちました。
-
右の写真は再塗装後です。
-
オリジナルは赤色と思われますが、T-2 のメータ照明の構造から見えにくいと思いました。
-
そこで、オレンジ色のエナメル塗料で着色しました。
組み立ててみてオレンジが正解、赤より見やすいです。
-
メータの目盛カバーを留めるには280℃の耐熱性のある高級ポリミドテープを使いました。
経年変化もありません。
-
交換前に実装されていた部品の記録
-
下の写真は交換前に実装されていた部品です。
今回は電解コンデンサだけです。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
[#4] [#5] は [チューナ基板] に実装されたコネクタです。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
#4-4pin |
+5V |
+5.14V |
〇 |
|
#5-5pin |
+13V |
+13.1V |
〇 |
|
#5-6pin |
-13V |
-14.5V |
〇 |
|
R205 (470Ω) 右側 |
+13.2V |
+13.3V |
〇 |
[REC CAL] OFF にて測定 |
-
調整結果
-
T-2 (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
-
RF/OSC とも大きくトラッキングズレしていました。
再調整で感度は倍程度に上がりました。
-
FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF MODE |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
stereo |
57 |
57 |
dB |
DX |
27 |
28 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
LOCAL |
mono |
0.05 |
% |
stereo |
0.05 |
% |
DX |
mono |
0.15 |
% |
stereo |
0.5 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
LOCAL |
stereo |
-56 |
-54 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
LOCAL |
mono |
0 |
+0.10 |
dB |
REC CAL |
LOCAL |
mono |
351.6 |
Hz |
-6.6 |
-6.6 |
dB |
使ってみました
-
デザイン
-
まずはズッシリ重たいことに驚きます。
-
全体が厚いアルミ材で出来ており、とっても高級感があります。
-
YAMAHA らしい優れたデザインです。
-
操作性
-
一般的な操作は直感で判ります。
-
チューニングノブの動きは高級機らしい重みがあってスムーズです。
ダイヤルスケールと指針がピタリ合います。
-
周波数のデジタル表示は放送局に同調ができた時にだけ表示されます。
-
アンテナ端子は F 端子のため、妨害電波の混入を防げます。
-
FM 受信
-
妨害波排除能力は強力です。
出てくる音は解像度感のあるシッカリした音です。