YAMAHA TX-2000 (3号機) が到着
2022年6月19日、大阪府豊中市の M さんより、
YAMAHA TX-2000
の修理依頼品が到着しました。
この写真は簡易アンテナで撮影したので、S メータの振れが小さいです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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知人から要調整の「TX-2000」を譲り受けたのですが、当然本来の性能とは程遠い状態だと思います。
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元箱もありますし外観の状態も良いのですが、メーカの修理受付は終了しています。
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具体的症状
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FM の受信感度が落ちています。
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シグナルメータがフラフラと不安定な時があります。
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オートチューニング時、正規周波数の -0.2MHz 前で一度停止しその後 -0.1MHz で受信となります。
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修理&再調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [E025789WY] です。
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ほぼ新品とも言えるくらい新品同様な超綺麗な逸品です。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入りましたが、動きがおかしいです。
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FM で MANUAL チューニングします。
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チューニングノブを時計方向に回し低い周波数から 90.0MHz とします。
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ここから更に時計方向に回すと 76.0MHz になります。
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ここから反時計回りに回すと 90.0MHz になりますが、ここでデッドロックします。
操作が何もできなくなります。
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AM でも同様に [最高周波数]→[最低周波数]→[最高周波数] の操作をするとデッドロックします。
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この現象は MCU (マイクロコンピュータユニット) のデッドロックですから、再調整では直りません。
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おそらく、前オーナが手放した理由もこれではないかと思います。
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さて、どうするか ・・・ 困った!
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正常に動作している時の FM 受信は周波数ズレはありますが、ちゃんと受信でき、[STEREO] 表示も出ます。
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S メータはそれなり振れ、感度が悪いような感じはしません。
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-0.2〜-0.1MHz 程度の同調点ズレがあります。
80.0MHz の放送が 79.9MHz で受信します。
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ステレオ感は感じます。
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正常に動作している時の AM 受信は正常で、AUTO TUNING も正常にです。
AM 受信は問題ないです。
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カバーを開けて内部をチェック
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内部は非常に綺麗でゴミもありません。
非常に良い状態です。
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使っている IC のロット番号より、本機は1989年製造品とわかりました。
リペア
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MCU がデッドロックする
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この不良を解決しないと再調整ができません。
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SONY ST-S333ES シリーズでも MCU の誤動作は何件か経験があり、この時は MCU の強制リセットで直りました。
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本機でも同じ手法で MCU を強制リセットしてみたら、
直りました!!!
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推定ですが、MCU の内蔵プログラムがノイズか何かの影響を受けて試験モードに切り換わってしまったのではないか?
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FM で -0.2〜-0.1MHz 程度の同調点ズレがある
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次項の再調整で直りました。
同調点ズレよりも CSL の大幅ズレが原因でした。
YAMAHA 自慢の CSL は経年変化に弱いです。
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CSL が狂うと同調ズレのように見えます。
この場合、同調点の調整をしても同調ズレは直りません。
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修理依頼者のコメントについて
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FM の受信感度が落ちている
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TX-2000 の S メータは高級機仕様ですから、アンテナ入力 80dB でフルスケールになる設定です。
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実用的に使える 60dB では半分ちょっとしか振れません。
ちなみに、安物チューナでは 40dB でもフルスケールになります。
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再調整後の S メータ表示には問題ありません。
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シグナルメータがフラフラと不安定な時がある
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TX-2000 の S メータは単に電波の強さを表示しているのではなく、クォリティ表示となっています。
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電波が強くてもパルチパス妨害などがあると振れ方がフラフラとします。
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すなわち、S メータの表示には問題がないのです。
電波の品質 (クォリティ) に問題があるのです。
再調整
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内部電源の電圧チェック
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以下のように問題なく良好でした。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
+30 |
+29±1V |
+28.8V |
〇 |
+12 |
+12.5±0.5V |
+12.3V |
〇 |
-12 |
-12.5±0.5V |
-12.0V |
〇 |
+6 |
+6±0.5V |
+5.92V |
〇 |
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調整結果
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TX-2000 (1号機)
に記載の調整手順で実施ました。
本機の状態が良かったので、調整はスンナリ決まりました。
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FM フロントエンドと CSL が大きくズレていました。
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FM ステレオセパレーションも再調整で大きくアップしました。
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高調波歪率 (1kHz) は [WIDE:0.022%] [NARROW:0.029%] と超優秀に調整できました。
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調整後の FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下です。
非常に良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
60 |
59 |
dB |
NARROW |
58 |
59 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-83 |
-84 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
0 |
dB |
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AM はループアンテナが添付されなかったので、軽くトラッキング調整しました。
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AM の場合、ループアンンテナも同調回路の一部なので、無いと完全な調整ができません。
使ってみました
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FM 受信
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感度は非常に高く、妨害波排除能力も高いです。
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S/N が抜群に良く、非常にクリアに聴こえます。
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柔らかい音の中にも解像度がある素晴らしく良い音です。
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音のエネルギーの重心がやや低音側にあります。
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揺らぎを感じないので、ピアノの音が豊かで綺麗に出ます。
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AM 受信