YAMAHA TX-2000

YAMAHA TX-2000

YAMAHA TX-2000 をゲット！

2008年7月4日、私のチューナーページのファンから YAMAHA TX-2000 を寄贈いただきました。このチューナーの記事を書くというのが条件でした。

実は、このチューナーを1990年頃に新品で買って所有していたことがあります。そして、引越しのため、泣く泣く手放したという経緯があります。 久々の再会です！！！

程度＆動作チェック

寄贈者のコメント
- 外観
  - サイドウッドとフロントパネルの透明アクリル表示部にはキズがない。
  - フロントパネルと天板に、大きなキズはないが小さなキズがある。
  - フロントパネルに小さな打ちキズが数ヶ所あり、全体にややくすみ汚れがある。
  - チューニングノブに小さな打ちキズと取れにくい汚れがある。
  - シーリングパネルの開閉は問題ない。リモコンにキズがある。
- 動作
  - 各ボタンを押して表示は正常に切り替わる。音声に歪は感じず、S/N は良好。
  - FM は信号レベルメータは振れてステレオ受信するが、やや感度が落ちている。
  - シーリングパネル内のボタンの一部に、押した際にきしむものがある。 (動作はする)
確かに寄贈者のコメント通り
- でも、パッと見た感じは美品ですので、気にしないことにします。
- チューニングノブに小キズがあるのが少し気にかかります。
リモコンには結構キズがある
- リモコンはほとんど使わないので気にしないことにします。
- おそらく、YAMAHA から取り寄せできると思うのですが、その気になったら確認してみます。

TX-2000 について

FM S/N 103dB という物凄い高性能チューナ
- 高調波歪率も mono 0.009%, stereo 0.01% と mono/stereo でほとんど変わらない低歪率です。
以下は TX-2000 のブロック図
- やはり、YAMAHA のフラグシップ機のことはあります。回路構成が豪華です！

カバーを開けてみました

開けてビックリ・・・この豪華なこと。写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
- 筐体は全て分厚い銅メッキ鉄板です。こりゃぁ～重くなる訳です。
- 電源トランスは高級クラスの良いものを使用しています。
- 基板の作りは良いです。紙エポキシ基板材です。
- 表示部はオレンジ色のバックライト液晶
  - 麦球（8V 150mA）×2個で液晶をバックから照射しています。
  - 蛍光表示に比べて繊細感があります。液晶なので寿命も長いと思われます。
- 天板カバーとサイドウッドの裏側を観察
  - 超豪華です。天板はアルミ材で前後2枚に分かれます。
  - サイドウッドと天板はサイド金具で連結します。
  - この全体を本体に被せ、底面から4本、リア面から5本のネジでシッカリと固定します。
  - この構造により、サイドウッドの外側にはネジ穴がないのです。
FM フロントエンド
- 厳重なシールドケースに入っており、大きく立派です。 5連バリキャップ方式で以下の構成です。
  
  [ダブル同調]→[Dual Gate FET]→[ダブル同調]→[Dual Gate FET ミクサ]←[OSC 同調]
- 同調回路はトラッキング調整できる構成です。
- RF アッテネータ回路 (ゲイン調節回路) が組み込まれています。
  - [RF ATT] ボタン ON で RF 段の [Dual Gate FET] のバイアスを変えてゲインを落とします。
FM IF 部
- WIDE 時
  
  [FET]→[CF1]→[IF amp]→ [T13] →[CF4]→[IF amp]→[uPC577H]→[レシオ検波]
- NARROW 時
  
  [FET]→[CF1]→[IF amp]→ [CF2]→[IF amp]→[CF3]→[IF amp] →[CF4]→[IF amp]→[uPC577H]→[レシオ検波]
- 全ての増幅段には、フィードバック制御で IF 歪を補正する優秀な回路 (アルファ・サーキット) が組み込まれています。
FM 検波部
- 広帯域レシオ検波です。通常のレシオ検波では IFT を2段構成にしますが、TX-2000 のレシオ検波は IFT 1段です。
- ここにも検波歪を補正する回路が組み込まれています。
FM MPX 部
- ディスクリート構成で豪華です。 MPX IC の LA3433 を MPX スイッチング信号抽出だけに使っています。
- VCO は無調整回路で、パイロットキャンセラー回路が実装されています。
- セパレーション調整は WIDE/NARROW 及び左右別々に調整できます。
FM 受信強度検出 (S メータ)
- LA1266 を使った以下の構成です。
  
  [FM フロントエンド]→[FET]→[CF5]→[LA1266]→[VR10]→[シグナルメータ回路]
AM 受信部
- SANYO LA1266 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。
プリセットメモリのバックアップ
- C164 4700uF/5.5V の電気二重層コンデンサでプリセットメモリのバックアップをしています。
その他
- 使っている IC のロット番号より、本機は1990年製造品と判りました。

調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

調整ポイント

FM/AM	機能	種別	調整ポイント	調整内容
FM	フロントエンド	L	T1 T2 T3 T4	RF トラッキング
		TC	VC1 VC2 VC3 VC4	RF トラッキング
		L	T8	OSC トラッキング
		IFT	T5	IF
	IF	VR	VR1 VR2 VR7 VR8	stereo IF 歪補正 (WIDE)
		IFT	T6 T13	stereo IF 歪補正 (WIDE)
		VR	VR3 VR4 VR5 VR6	stereo IF 歪補正 (NARROW)
	DET	IFT	T5	同調点 (NULL)
		VR	VR9	mono IF 歪補正
		TC	VC5	mono IF 歪補正
		VR	VR10	S メータレベル
	MPX	L	T10 T12	PLL 入力位相
		L	T11	パイロットキャンセル
		VR	VR15	パイロットキャンセル
			VR11	NARROW セパレーション (L)
			VR12	NARROW セパレーション (R)
			VR13	WIDE セパレーション (L)
			VR14	WIDE セパレーション (R)
	CSL	VR	VR17	IF オフセット
AM	フロントエンド	L	PK1	RF トラッキング OSC トラッキング
AM	IF	IFT	T9	IF

テストポイント (TP)

TP 接続先 内容備考

L17 L17～GND 間 VT 電圧 L17 のリードのどちらでもよい

FMS FMS～GND 間検波 NULL 電圧 FM 同調点
電圧チェックポイント (VP)

VP 標準電圧 実測電圧 判定

+30 +29±1V +28.6V 〇

+12 +12.5±0.5V +12.3V 〇

-12 -12.5±0.5V -12.3V 〇

+6 +6±0.5V +6.2V 〇

FM 受信部の調整

手順1～12は、同調を [FINE TUNING] にして CSL の動作を止める必要があります。
[L17] は [VR4] と [T5] の中間近くにあるコイルです。このどちらのリードで電圧測定しても構いません。
[S メータ] は [C163 1uF/50V] の＋側を DMM で電圧値を見たほうが正確です。
- [C163] はチューナ基板の左下にある一番大きな LSI (CSL CONTROLLER) の左上にあります。
SSG の 変調 : L-R とは・・・
- L チャンネルに正位相信号, R チャンネルに逆位相信号を入れて変調します。 R = -L です。
- 主信号 = L + R = L + (-L) = 0 となり、 副信号 = L - R = L - (-L) = 2L となります。
- すなわち、主信号がなしで副信号だけとなります。
[D4] [K3] と書かれたジャンパーポストをショートすると、CSL 調整用の特別モードになります。隠しコマンドみたいなもの
- このモードでは、プリセットメモリが調整用に初期化されます。

手順	SSG 出力	TX-2000 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	BAND : FM MODE : AUTO ST BLEND : OFF IF MODE : WIDE RF ATT : OFF ANTENNA : A	-	-
2	-	90MHz 受信	T8	L17 電圧 = 25.3V	OSC トラッキング調整
3	-	76MHz 受信	-	L17 電圧 = 7.4V 確認のみ	OSC トラッキング調整
4	76MHz 40dB mono 1kHz	76MHz 受信	L1 L2 L3 L4	S メータ = 最大	RF トラッキング調整
5	90MHz 40dB mono 1kHz	90MHz 受信	VC1 VC2 VC3 VC4	S メータ = 最大
6	手順4と5を数回繰り返す
7	83MHz 40dB mono 1kHz	83MHz 受信	T5	S メータ = 最大	IF 調整
8	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信	T7	FMS 電圧 = 0±20mV	検波調整
9	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信	VR9 VC5	オーディオ出力 = 高調波歪最小
10	手順8と9を数回繰り返す
11	83MHz 90dB stereo 1kHz L-R	83MHz 受信 IF MODE : WIDE	T10 T12	オーディオ出力 = 最大	MPX PLL 入力位相調整
12	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信 IF MODE : WIDE	T5 T6 T13 VR1 VR2 VR7 VR8	オーディオ出力 = 高調波歪最小	IF WIDE ステレオ歪調整 T5 は±180度以内で調整する
13		83MHz 受信 IF MODE : NARROW	VR3 VR4 VR5 VR6	オーディオ出力 = 高調波歪最小	IF NARROW ステレオ歪調整
14		83MHz 受信 IF MODE : WIDE	VR15 T11	オーディオ出力 = 19kHz 成分最小	パイロットキャンセル調整
15	83MHz 90dB 変調 : stereo 1kHz R	83MHz 受信 IF MODE : WIDE	VR14	L ch. オーディオ出力 = 最小	IF WIDE セパレーション調整
16	83MHz 90dB 変調 : stereo 1kHz L	83MHz 受信 IF MODE : WIDE	VR13	R ch. オーディオ出力 = 最小	IF WIDE セパレーション調整
17	83MHz 90dB 変調 : stereo 1kHz R	83MHz 受信 IF MODE : NARROW	VR12	L ch. オーディオ出力 = 最小	IF NARROW セパレーション調整
18	83MHz 90dB 変調 : stereo 1kHz L	83MHz 受信 IF MODE : NARROW	VR11	R ch. オーディオ出力 = 最小	IF NARROW セパレーション調整
19	-	BAND : FM MODE : AUTO ST BLEND : OFF IF MODE : WIDE RF ATT : OFF ANTENNA : A	-	-
20	83MHz 80dB mono 1kHz	83MHz 受信	VR10	S メータ = フルちょうどフルになるよう調整	S メータ調整
21	-	[D4]～[K3] ショート	-	-	IF OFFSET 調整 (CSL 調整)
22	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信表示は [30.0] となる	VR17	表示が [30.0] と [30.1] を繰り返すよう調整
23	-	[D4]～[K3] オープン	-	-

AM 受信部の調整

純正の AM ループアンテナを接続して調整します。
[L17] は [VR4] と [T5] の中間近くにあるコイルです。このどちらのリードで電圧測定しても構いません。
[T9] の近くにある緑色のケースでコアが2つある部品が PK1 です。
- リアパネル側のコアが RF コアで、フロントパネル側のコアが OSC コアです。

手順	SSG 出力	TX-2000 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	BAND : AM	-	-
2	-	1620kHz 受信	PK1 OSC コア	L17 電圧 = 23.3V	OSC トラッキング調整
3	-	522kHz 受信	-	L17 電圧 = 3.3V 確認のみ	OSC トラッキング調整
4	1080kHz 変調 : OFF 出力 : 40dB	1080kHz 受信	PK1 RF コア	S メータ = 最大	RF トラッキング調整
5	1080kHz 変調 : OFF 出力 : 40dB	1080kHz 受信	T9	S メータ = 最大	IF 調整

再調整結果
- FM フロントエンド、IF 部、レシオ検波部、MPX 部それぞれ少しズレていましたが、大きなズレはありませんでした。
- FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。
項目 IF BAND L R 単位

ステレオセパレーション (1kHz) WIDE 68 66 dB

NARROW 64 62 dB

パイロット信号キャリアリーク - -70 -70 dB

使ってみました

筐体の作りは超豪華
- デザインと質感は保有チューナーで最高 です。惚れ惚れします。
- [フロントパネル] [天板] [シーリングパネル] にチタンコーティングのアルミ材を使用しており、質感は高いです。
- 底板は実測 1.65mm 厚の分厚い銅メッキ鉄板で、豪華です。
- アンプ並の 7.2kg の重さで、ズシッとした重みを感じます。
- シーリングパネルは全体が回転するようになっています。
  - 重々しく回転するので高級感あります。普段それほど操作しないボタンが収納されています。
- メタルマスクされたオレンジ色の液晶表示器
  - ハイコントラストで綺麗な表示ができます。蛍光表示器よりコストがかかっており豪華です。繊細感と高級感が漂います。
  - 液晶表示器の数字部分は、放送局名を英数表示することもできます。たった4文字ですが・・・
- サイドウッドは鏡面仕上げで豪華です。
  - サイドウッドの側面にはネジ穴がありません。天板の内側から結合されています。
リアパネル
- FM アンテナ入力は A/B 2系統あり、F 端子で妨害電波が混入しないです。
- AC コードは品川電線製の YAMAHA 専用ケーブルです。非常に柔らかくて質の良い OFC ケーブルです。
- 端子類は全て金メッキされています。
機能面
- [FINE TUNING] を併用すると
  - FM 受信周波数は 10kHz の分解能があり、この周波数をプリセットすることもできます。
  - AM 受信周波数は 1kHz の分解能があり、この周波数をプリセットすることもできます。
- シグナルメータが24レベル表示
  - 精度が高く、電界強度把握で十分役に立ちます。
- プリセットメモリは FM/AM ランダムに24局分
  - 放送局周波数だけではなく、[FM MODE] [BLEND] [IF MODE] [RF ATT] [ANTENNA A/B] [TUNING MODE] も記憶できます。
  - 電源 OFF としても1週間は記憶が保持されます。 1週間はスペックです。かなり短い気がします。毎日使う前提でしょう。
感度と音質
- FM の感度は非常に高く、妨害波排除能力も高いです。
  - 音質が良い！ ・・・まさに ナチュラルサウンド
  - 聴いていて非常にクリアに聴こえます。 S/N が抜群に良いからだと思います。
  - 音楽ではまるで自分の CD を聴いているかのような感じがします。
  - 放送スタジオのアナウンサーの身辺雑音 (紙をめくる音など) まで聴こえてしまいます。
  - 柔らかい音の中にも解像度がある素晴らしく良い音です。耳に馴染む繊細な音です。
  - 音のエネルギーの重心がやや低音側にあって揺らぎを感じないので、ピアノの音が豊かで綺麗に出ます。
  - PLL 検波は解像度があって細身の音ですが、TX-2000 の広帯域レシオ検波は豊かで繊細な音です。
- AM の感度は良いです。
  - 音は普通です。

レベルメータ

FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。 1～24 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。
実測してみて、振れが滑らかで精度が高いと思いました。素晴らしいです。

これを見ると、S/N 良く受信するためには、レベル17（シグナルメータの数値で80弱）以上の必要があるようです。

シグナルメータの数値

100

アンテナ入力 (dB)

～23

24～29

○

30～34

○

35～36

○

37～37

○

38～39

○

40～40

○

41～42

○

43～43

○

44～45

○

46～46

○

47～48

○

49～50

○

51～52

○

53～54

○

55～56

○

57～58

○

59～59

○

60～61

○

62～63

○

64～66

○

67～70

○

71～76

○

77～79

○

80～

○

仕様など

ドキュメント
- TX-2000 取扱説明書
- TX-2000 Owners Manual (海外モデル)
- TX-2000 カタログ
- TX-2000 Service Manual (1/2) / TX-2000 Service Manual (2/2) (海外モデル)

仕様

FM チューナー部
受信周波数範囲	76～90MHz
実用感度 (75Ω)	mono : 0.9uV / 10.3dBf
S/N 比 50dB 感度	mono : 1.55uV / 15.1dBf stereo : 20uV / 37.2dBf
イメージ妨害比	100dB
IF 妨害比	110dB
スプリアス妨害比	110dB
AM 抑圧比	70dB
キャプチャーレシオ	1.2dB (WIDE)
実効選択度	90dB (NARROW)
S/N 比	mono : 103dB stereo : 93dB
全高調波歪率	mono : 0.009% (WIDE, 1kHz) stereo : 0.01% (WIDE, 1kHz)
ステレオセパレーション	70dB (WIDE, 1kHz)
周波数特性	20Hz～15kHz +0.2 -0.5dB
出力レベル/インピーダンス	500mV/1kΩ (100% 変調, 1kHz)
AM チューナー部
受信周波数範囲	522～1620kHz
実用感度	100uV/m
イメージ妨害比	40dB
スプリアス妨害比	50dB
実効選択度	32dB
S/N 比	52dB
高調波歪率	0.3%
出力レベル/インピーダンス	150mV/1kΩ (30% 変調, 400Hz)
総合
電源電圧	AC100V, 50/60Hz
消費電力	12W
外形寸法	473(W)×95.5(H)×366.5(D)mm
重量	7.2kg
付属品	ワイヤレスリモコン
その他
発売時期	1988年
定価	100,000円

TP	接続先	内容	備考
L17	L17～GND 間	VT 電圧	L17 のリードのどちらでもよい
FMS	FMS～GND 間	検波 NULL 電圧	FM 同調点

VP	標準電圧	実測電圧	判定
+30	+29±1V	+28.6V	〇
+12	+12.5±0.5V	+12.3V	〇
-12	-12.5±0.5V	-12.3V	〇
+6	+6±0.5V	+6.2V	〇

項目	IF BAND	L	R	単位
ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	68	66	dB
ステレオセパレーション (1kHz)	NARROW	64	62	dB
パイロット信号キャリアリーク	-	-70	-70	dB