KENWOOD KT-7020

KENWOOD KT-7020 がやってきた!

2008年6月29日、私のチューナーページのファンより、まだ実物を見たことのなかった KENWOOD KT-7020 を研究材料として借用しました。 リペア中に壊れても補償しないということで・・・

この写真は、補助光にホームセンターで買った安い 250W 小型ハロゲン投光器(税込980円)を使っています。 写真機材店でハロゲンライトを買うと高い(数万円)ですが、屋外投光器ならこんなに安いです。 黒のフロントパネルは補助光でコントラストを上げないとボタンや文字が綺麗に写らないです。 ハロゲンなので発光は橙色ですが、これは Nikon D70 のホワイトバランスを「電灯」にすることで色温度補正しています。 直接投光すると光が硬すぎるので、ティッシュペーパー2枚でディフューズして光を柔らかくしています。 アクリルパネルの反射に私が写ってしまっていますが、これは今後の検討課題です・・・黒子衣装を着ればよいのかなぁ。

早速、外観&動作チェックしました。



カバーを開けてみました

  1. メイン基板は KENWOOD KT-V990 とほぼ同じです。 MPX IC が LA3350 から LA3361 に変更されています。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. KENWOOD の基板の作りはかなり良いです。 部品も綺麗に整然と並んでいます。 さすが、測定器や無線通信機器も製造しているメーカだけあります。

  3. FM フロントエンド部は5連バリキャップ方式です。 [シングル同調]→[Dual Gate FET]→[ダブル同調]→[Dual Gate FET ミクサ]←[OSC バッファ同調]←[OSC同調] の構成です。 同調回路はトラッキング調整できない構成です。 KT-V990 と全く同じです。

  4. IF 部は CF フィルター3段+ LA1231N です。 KT-V990 と全く同じです。

  5. FM 検波部は PLL 検波です。 PLL 検波のフィードバック部に DLLD(Direct Linear Loop Detector) という高調波歪補正回路が組み込まれています。 IF 段で発生する高調波歪みを補正する DCC(Distortion Correcting Circuit) も組み込まれています。 KT-V990 と全く同じです。

  6. MPX 部は LA3361 +MC1495L の構成です。 KT-V990 と MPX IC が異なります。

  7. AM 受信部は LA1245 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。 KT-V990 と全く同じです。

  8. TV 音声受信部はたぶん普通の構成なのだろうと思います。

  9. 使用 IC のロット番号より、この KT-7020 は1990年製と判明しました。 電源ケーブルのマーキングも1990年となっています。



リペア



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. FM 同調点の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L9 TP5-TP6 間電圧 = 0V ±20mV 以内

  2. FM フロントエンドの調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 L14 TP3 電圧 = 3.1V VT low
    3 - - 90MHz 受信 TC1 TP3 電圧 = 24.2V VT high
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 - - 83MHz 受信 L10 フロントエンド内
    R16 の左側波形 = 最大
    OSC BUffer 調整
    シンクロスコープで測定
    6 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 L1
    L4
    L7
    L17
    検波基板
    CN3 の 4pin 電圧 = 最大
    RF&IF 調整

  3. FM PLL 検波部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L11 L11 の 2次側波形 = 最大 シンクロスコープで測定
    3 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L12 TP7〜TP8 間電圧 = 0V ±20mV 以内

  4. FM MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : AUTO
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR3 TP20 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    3 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : L only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR4 R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 R セパレーション調整
    4 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : R only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR5 L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 L セパレーション調整

  5. FM DCC 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : AUTO
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 DCC 基板
    VR3 (DET)
    VR4 (MONO)
    VR6 (MONO)
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 モノラル歪調整
    3 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : L-R, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 DCC 基板
    VR5 (ST-L)
    VR7 (SUB)
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 ステレオ歪調整

  6. AM 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-7020 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : AM
    REC CAL : OFF
    - - AM ループアンテナを接続する。
    SSG 出力は10kΩ抵抗を介して EXT から注入する。
    2 531kHz - 531kHz 受信 L26 TP3 電圧 = 1.5V VT low
    3 1602kHz - 1602kHz 受信 TC2 TP3 電圧 = 8.3V VT high
    4 - - - - 手順2〜3を数回繰り返す VT トラッキング調整
    5 603kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    603kHz 受信 L27 シグナルレベルメータ = 最大  
    6 1395kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    1395kHz 受信 TC3 シグナルレベルメータ = 最大  
    7 - - - - 手順5〜6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 603kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    603kHz 受信 L28 シグナルレベルメータ = 最大 IF 調整

  7. 調整結果

    1. あちこちズレまくっていました。 再調整で感度と音質が大きく向上しました。

      • FM フロントエンド ・・・ ガタガタでした。調整で感度向上しました。
      • FM 同調点 ・・・ -0.1MHz 同調ズレするくらいズレていました。調整で同調ズレは直りました。
      • FM PLL 検波 ・・・ 10.7MHz を注入する 1st IF が大きくズレていました。再調整で大幅に歪率が改善しました。
      • FM MPX ・・・ VCO 周波数がズレていました。再調整でセパレーションが上がりました。
      • FM DCC ・・・ 大幅にズレていました。再調整で大幅に歪率が改善しました。

    2. FM ステレオセパレーションは 左:79dB, 右:75dB になりました。 この数値は高級機並みです。

    3. FM パイロット信号キャリアリークは調整できませんが、-70dB でした。 良い数値です。



使ってみました



レベルメータ



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様



    その他  
    発売時期 1989年
    定価 50,000円