KENWOOD KT-V880

KENWOOD KT-V880 をゲット!

2008年9月5日、私のチューナーページのファンから KENWOOD KT-V880 の寄贈を受けました。

VHF/UHF TV 音声チューナー付で、 KT-V990 の下位機種です。

まずは、外観&動作チェックしました。

カバーを開けてみました

  1. 基板は二階建て構造で、このためにメンテナンス性が悪いです。 一階基板は FM/AM チューナー回路で、二階基板は TV チューナー回路です。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. 部品は基板に綺麗に整然と並んでいます。

  3. FM フロントエンド部は4連バリキャップ方式です。 [シングル同調]→[Dual Gate FET]→[ダブル同調]→[ミクサ Dual Gate FET]←[OSC同調 TR] の構成です。 同調回路はトラッキング調整できません。

  4. FM IF 部は、WIDE 時は [U-CF]→[IF amp.]→[IF amp.]→[U-CF]→[LA1235] で、NARROW 時は [U-CF]→[IF amp.]→ [CF] →[IF amp.]→[U-CF]→[LA1235] の構成です。

  5. FM 検波は LA1235 を使ったクォードラチュア検波です。

  6. MPX 部は LA3401 を使った PLL MPX です。

  7. AM 受信部は LA1245 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。

  8. TV 音声受信部はたぶん普通の構成なのだろうと思います。 (比較する機種を触ったことがないので評価できない。)

  9. 以上の構成なので、 KT-V990 よりかなり劣ります。

  10. IC を使用して合理化が図られています。 主な IC は以下です。


  11. 使っている部品のロット番号より、本機は1988年製造品と判りました。 電源ケーブルの製造マーキングも1988年でした。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. FM 同調点の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V880 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    TUNING MODE : MANUAL
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L9 TP9-TP10 間電圧 = 0V ±20mV 以内

  2. FM フロントエンドの調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V880 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    TUNING MODE : MANUAL
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 L6 TP5 電圧 = 3.1V VT low
    3 - - 90MHz 受信 TC1 TP5 電圧 = 23.2V VT high
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 L1
    L2
    L3
    LA1235 13pin 電圧 = 最大 RF 調整
    6 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 L5 LA1235 13pin 電圧 = 最大 IF 調整

  3. FM クォードラチュア検波部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V880 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    TUNING MODE : AUTO
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L9 TP9-TP10 間電圧 = 0V ±20mV 以内
    3 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L10 オーディオ出力 = 高調波歪最小 WaveSpectraで観測
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す  

  4. FM MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V880 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    TUNING MODE : AUTO
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : L/R only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR3 R/L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  5. AM 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V880 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : AM
    REC CAL : OFF
    TUNING MODE : MANUAL
    - -  
    2 531kHz - 531kHz 受信 L12 TP3 電圧 = 1.5V VT low
    3 1602kHz - 1602kHz 受信 TC3 TP3 電圧 = 8.1V VT high
    4 - - - - 手順2〜3を数回繰り返す VT トラッキング調整
    5 603kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    603kHz 受信 L14 シグナルレベルメータ = 最大  
    6 1395kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    1395kHz 受信 TC5 シグナルレベルメータ = 最大  
    7 - - - - 手順5〜6を数回繰り返す RF トラッキング調整

  6. 調整結果

    1. 特に FM フロントエンドとクォードラチュア検波部が大きく調整ズレしていました。 再調整にて感度と音質が向上しました。

    2. FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。 ステレオセパレーションは、WIDE ではまあまあですが、NARROW では大きく落ち込みます。 NARROW では使えないです。

      項目 IF BAND L R 単位
      ステレオセパレーション WIDE 52 50 dB
      ステレオセパレーション NARROW 26 26 dB
      パイロット信号キャリアリーク - -77 -75 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) WIDE 0 +0.1 dB



使ってみました



レベルメータ



仕様その他

  1. ドキュメント

  2. 仕様は以下です。

    FM チューナー部  
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡
    感度(75Ω) Distance : 0.95μV/10.8dBf
    Direct : 10μV/31.2dBf
    50dB クワイティング感度 Distance mono : 1.8μV/16.2dBf
    Distance stereo : 24μV/38.8dBf
    Direct mono : 18μV/36.3dBf
    Direct stereo : 240μV/58.3dBf
    高調波歪率(1kHz) wide mono : 0.015%
    wide stereo : 0.02%
    SN 比(100% 変調85dBf 入力) mono : 88dB
    stereo : 82dB
    キャプチャーレシオ(IHF) wide : 1.0dB
    narrow : 2.5dB
    実効選択度(IHF) wide : 48dB
    narrow : 60dB
    ステレオセパレーション(wide 1kHz) 60dB
    周波数特性 20Hz〜15kHz ±0.5dB
    イメージ妨害比(84MHz) 90dB
    IF 妨害比(84MHz) 120dB
    スプリアス妨害比(84MHz) 110dB
    AM 抑圧比(65.2dBf) 72dB
    サブキャリア抑圧比 70dB
    出力レベル/インピーダンス(1kHz、100% 変調) 0.6V/3.3KΩ
    AM チューナー部  
    受信周波数 531〜1602kHz
    感度 10μV・250μV/m
    高調波歪率(1000kHz) 0.3%
    イメージ妨害比(1000kHz) 40dB
    IF 妨害比(1000kHz) 55dB
    選択度(IHF) 25dB
    出力レベル/インピーダンス 0.18V/3.3kΩ
    SN 比(30%変調1mV入力) 52dB
    TV チューナー部  
    受信チャンネル VHF : 1 〜 12ch
    UHF : 13 〜 62ch
    アンテナインピーダンス VHF : 75Ω不平衡
    UHF : 300Ω平衡
    感度 VHF : 3.0μV
    UHF : 20μV
    SN 比 60dB(VHF)
    高調波歪率 0.2%
    チャンネルセパレーション 40dB
    出力レベル/インピーダンス 0.45V/3.3kΩ(1kHz、100%変調)
    総合  
    電源 AC100V、50/60Hz
    定格消費電力(電気用品取締法) 13W
    外形寸法 (幅×高さ×奥行) 440(W)×78(H)×317(D)mm
    重量 3.7kg
    その他  
    発売時期 1987年
    定価 45,000円