LUXMAN T-12

LUXMAN T-12 をゲット！

超美しいデザインです！！！

2009年5月30日、LUXMAN T-12 のジャンク品を4,000円で入手しました。 FM 専用機で 定価96,000円 の高級チューナです。

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早速、程度＆動作チェック

1. 販売者のコメント
   
   
   • 中古ですので汚れや傷があります。 表示窓にぐらつきがあります。 ランプ切れあるかもしれません。
     
     
   • 各動作 NG です ・・・ 微かに受信しますが不安定です。 他にも不具合があるかもしれません。
     
     
   • 電源コードは変えていると思います。 付属品はありません。
     
     
2. 外観
   
   
   • 天板に僅かな線キズがある以外はキズが見当たりません。 外観は新品同様に綺麗です。
     
     
   • 各ボタンにサビが出ておらず、リアパネルの端子はピカピカです。
     
     
   • ダイヤルの動きは非常にスムーズでバックラッシュも感じません。
     
     
   • 確かに表示窓にぐらつきがあります。 ダイヤルスケール用アクリルなどの接着が剥離したようです。
     
     
   • 確かに電源コードは交換してありましたが、柔らかい良好な OFC ケーブルなので、問題ないです。
     
     
   • 外観状態が良い超美しいチューナーです。 最悪、直らなくてもオブジェとしての価値があります。
     
     
3. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました
   
   
   • 電源は入りましたが、全く動作しません。
     
     
   • ランプ切れはありません。
     
     

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カバーを開けてみました

1. 素晴らしい！！！　まるで測定器のような美しい作り ・・・ 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
   
   　
   
   
   • リア側の大きな基板は [チューナ基板]
     
     
     • 基板上にある黒いケースは集合 IFT です。 金属ケースは MPX LPF です。
       
       
     • 集合 IFT の中には IFT が4個も入っています。 この集合 IFT を使うことにより、wide では CF レスになっています。
       
       
   • フロントパネル側中央にある金属ケースは [フロントエンド]
     
     
     • 通信機と同様な作りで、空中配線も取り入れて良好な高周波特性が出る作りになっています。
       
       
     • さすが高級機、素晴らしい！
       
       
   • フロントエンドの左側にある金属ケースは [クリスタルロック制御基板]
     
     
   • フロントエンドの右側にある基板は [電源基板]
     
     
     • ±15V を出力します。
       
       
   • 大型で高級な電源トランスを使っています。
     
     
   • 綺麗なのは表側だけではありません。 裏側の配線も一級品です。
     
     
   • 筐体はフレームに鉄板を豊富に使い、剛性抜群です。
     
     
   • IC を使用して合理化が図られています。
     
     

     メーカ	IC	機能
     HITACHI	HA11211	FM/AM Tuner System
     	HA11223	PLL FM Stereo Demodulator with Pilot Cancel
     Rohm	BA656	LED Level Meter Drive
     TOSHIBA	TA7060P	FM IF Amplifier

     
     
   • 使用 IC のロット番号より、この T-12 は1977年製と判明しました。
     
     
2. フロントエンド
   
   
   • FM 専用5連バリコンで以下の構成です。
     
     
     (ANT)→[同調]→[Dual Gate FET]→[同調]→[同調]→[同調]→[Mixer : Dual Gate FET]←[OSC 同調 (TR)]
     
     
3. IF 部
   
   
   • wide 時は以下の構成です。 [集合 IFT] のみ使って CF は使っていません。 コストがかかっています。
     
     
     (FE)→[TR]→[集合 IFT]→ [TA7060P] →[TA7060P]→[集合 IFT]→[HA11211]
     
     
   • narrow 時は以下の構成です。
     
     
     (FE)→[TR]→[集合 IFT]→ [TA7060P]→[UCF]→[UCF]→[TR]→[UCF]→[UCF]→[TR] →[TA7060P]→[集合 IFT]→[HA11211]
     
     
   • S メータ用に専用の IF 回路があります。 以下の構成の赤文字の部分です。
     
     
     (FE)→[TR]→[集合 IFT]→ [TA7060P]→[FET]→[IFT]→[CF]→[TA7060P]→[レベル検出] →(S Meter)
     
     
4. 検波部
   
   
   • [HA11211] を使ったクォードラチュア検波です。
     
     
   • 当時はクォードラチュア検波が広帯域ということで最高とされていました。
     
     
5. MPX 部
   
   
   • [HA11223] を使った PLL MPX です。 パイロット信号キャンセラー回路を備えています。
     
     
   • セパレーション調整ボリュームは1個で左右兼用します。
     
     
   • [HA11223] は当時の優秀な MPX IC でした。
     
     

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リペア

1. 電源は入るが全く動作しない
   
   
   • 原因は位相シフタ IFT (L105) の容量抜けでした。
     
     
   • 温度補償型セラミックコンデンサの 9PF を L105 にパラに取り付けました。
     
     
   • 全ての動作チェックで問題なく、動作良好になりました。
     
     
   • T-12 は同調点検出しないと、S メータを含め全ての動作がロック（OFF 状態）されるようです。
     
     
     • SONY ST-S333ES シリーズも同様ですが、T-12 はもっとシビアなようです。
       
       
2. 表示窓にぐらつきがある
   
   
   • 単にフロントパネルとアクリル板＆スイッチ板の接着が外れているだけです。 接着剤（ボンド）で再接着すればよいのです。
     
     
   • 上の対策をやるためにはフロントパネルを一旦取り外す必要があるのですが、これに悩みました
     
     
     • フロントパネルの取り付け状態を見ると、5mm 厚のフロントパネルにネジ穴を切り、それをスペーサを介して本体フレームと結合しています。
       
       
     • そのスペーサと本体はプラスネジで固定されているのですが、その取り付けネジを回すのに通常のドライバーでは回せないのです。
       
       
     • 取り付けネジ穴のすぐ後ろに別のフレームがあるので、通常のドライバーでは別のフレームに当って入らない。
       
       
   • 色々考えましたが、アキバでオフセットドライバー（ENGINEER DZ-08, 税込650円）を買ってきてフロントパネルを外すことに成功しました。 オフセットドライバーとは、Ｌ型になった＋ドライバーです。 「弘法も筆を選ぶ」 とはこのことを言うのでしょう。
     
     
   • フロントパネルが外れたので、アクリル板＆スイッチ板をボンドで再接着してから元通りに組み立てました ・・・ 直りました！！！
     
     
   • フロントパネルを外してみて判ったのですが、やはり工場の生産でも、このようにオフセットドライバーで行ったようです。 その証拠にネジにネジロック剤が塗布されていました。 オフセットドライバーでは大きな力で締め付けできないので、ネジロック剤で強度を持たせているのです。 製造現場泣かせの構造ですね。 今後もこのネジを外すことがあるなら、キャップボルトに交換したほうがよいかもしれません。
     
     
3. [tuning lock release] ボタンの状態を示す赤色 LED が点灯しない
   
   
   • これはフロントパネルを取り外した時に初めて気が付きました。
     
     
   • 調査の結果、LED リード線の配線が外れているためと判明しました。
     
     
   • LED リード線の配線を補修しました ・・・ 直りました！！！
     
     
4. ダイヤルパネル照明用ランプ交換
   
   
   • ダイヤルパネル照明用には T10 12V 3W (計算では 0.25A) タイプでガラス部分の高さが低いものが2個使われています。
     
     
   • ランプ切れではなかったのですが、ランプのガラス面が黒ずんでいました。 そろそろ寿命かもしれません。
     
     
   • 30年ものビンテージですからランプ交換しておきたい ・・・ とアキバを彷徨ったら同じものがありました。
     
     
   • T10 12V 0.11A でガラス球の長さが短い（球に近い）ものです。 税込1個80円で、2個買いました。
     
     
   • フィラメント電流が [オリジナル品 0.25A]→[交換品 0.11A] と 44% ですが、照度不足もなく問題なく使えています。
     
     
   • これでまた30年は持つかな？？？
     
     
5. クリーニング
   
   
   • 外観は新品同様の美しさだったので、軽くゴミを落としただけです。 内部は結構、綿埃とタバコのヤニの類のゴミがありました。
     
     
   • ハケとブロアで出来るだけ落としましたが、細かい部品の近くは完全には落とせませんでした。
     
     

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調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. FM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	T-12 の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	IF narrow : ON mono : OFF test tone : OFF multipath : OFF muting off : ON quartz off : OFF tuning lock release : ON	-	-
   2	76MHz 30〜60dB mono 1kHz	76MHz 受信	フロントエンド L0	[HA11211] 9pin 電圧 = 最大	OSC トラッキング調整
   3	90MHz 30〜60dB mono 1kHz	90MHz 受信	フロントエンド TC5
   4	手順2と3を数回繰り返す
   5	76MHz 30dB mono 1kHz	76MHz 受信	フロントエンド LA LR1 LR2 LR3	[HA11211] 9pin 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   6	90MHz 30dB mono 1kHz	90MHz 受信	フロントエンド TCA TCR1 TCR2 TCR3
   7	手順5と6を数回繰り返す
   8	83MHz 30dB mono 1kHz	83MHz 受信	フロントエンド IFT	[HA11211] 9pin 電圧 = 最大	IF 調整
   9	83MHz 60dB mono 1kHz	83MHz 受信	VR103	R181 (560Ω) リア側 = 200mVp-p オシロスコープで測定	IF NARROW GAIN 調整
   10		83MHz 受信 IF narrow : OFF	VR102		IF WIDE GAIN 調整
   11	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信	L104	オーディオ出力 = 高調波歪最小	クォードラチュア検波調整
   12			L105	TP52〜TP53 間電圧 = 0V
   13	手順11と12を数回繰り返す
   14	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信 multipath : ON	VR104	オーディオ出力 = 最小	MULTIPATH 調整
   15	83MHz 60dB mono 1kHz	83MHz 受信 multipath : OFF	VR110	S メータ = ちょうどフル点灯	S メータ調整
   16	83MHz 90dB mono 400Hz	83MHz 受信	VR106	オーディオ出力電圧 = 1Vrms	オーディオ出力調整
   17	-	test tone : ON	VR109	オーディオ出力電圧 = 0.5Vrms	test tone 調整
   18	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信 test tone : OFF	VR108	以下の [VCO 調整手順] を参照	VCO 調整
   19	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信	VR107	オーディオ出力電圧 = 19kHz 成分最小	パイロットキャンセル調整
   20			VR101 フロントエンド IFT	オーディオ出力 = 高調波歪最小	ステレオ高調波歪 IF 補正
   21	83MHz 90dB stereo 1kHz R/L		VR105	L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小	セパレーション調整

   
   
   • VCO 調整手順
     
     

     手順	備考
     1	VR108 を反時計方向に回し切る
     2	VR108 を徐々に時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯した位置を記録する
     3	VR108 を時計方向に回し切る
     4	VR108 を徐々に反時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯する位置を記録する
     5	VR108 を [手順2] と [手順4] の中間に設定する

     
     
2. 調整結果
   
   
   • FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。
     
     

   項目	IF BAND	L	R	単位
   ステレオセパレーション	wide	64	60	dB
   	narrow	26	26	dB
   パイロット信号キャリアリーク	wide	-67	-67	dB
   オーディオ出力レベル偏差 (MONO)		0	-0.03	dB
   test tone 信号		410.2		Hz
   		-6.0	-6.0	dB

   
   

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使ってみました

1. デザイン
   
   
   • 非常に美しいチューナーです。 LUXMAN デザインは優美です。
     
     
   • 眺めたり触ったり ウットリ します。 オブジェとしての価値も十分です。
     
     
   • フロントパネルはヘアラインアルミで 5mm 厚で、質感抜群です。
     
     
   • ダイヤルスケールと指針は美しい
     
     
     • 指針は、特別に製作した重厚な金色に輝く高級感のあるアルミ素材です。
       
       
     • ダイヤルスケールは 2MHz ごとに重厚な金色に輝く高級感のある細いアルミ素材を貼り付けてあります。
       
       
     • 腕時計の文字盤のような美しい仕上げです。
       
       
   • ダイヤルスケールの照明が淡くホンワカした感じが良いです。
     
     
   • LED 表示は赤一色ですが、これがダイヤルスケールの照明とベストマッチングで上品です。
     
     
   • チューニングノブやファンクションボタンは梨地仕上げで適度に小さく上品です。
     
     
   • 薄型なのに、ズッシリとした高級品らしい重さがあります。
     
     
2. 機能関連
   
   
   • Accutouch
     
     
     • チューニングノブを回して放送局が見つかるとノブを機械的にロックします。
       
       
     • ロックがかかったところで手を離すと、それが最適受信周波数にセットされています。
       
       
     • このロックは1秒程度で自動解除されます。
       
       
   • CLL (Closed Loop Lock)
     
     
     • 一般的にはクォーツロックと言われる周波数同調ロック方式です。
       
       
     • 放送局の周波数に水晶発振器の精度で周波数ロックします。
       
       
     • これにより、FM 受信時のオーディオ出力の歪が最小になります。
       
       
   • マルチパス検出機能
     
     
     • [multipath] ボタンを ON すると小さな放送音が聴こえます。
       
       
     • この音が最小になるよう、アンテナの向きなどを調整します。
       
       
   • FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。
     
     
3. 高性能で推奨できます
   
   
   • クォードラチュア検波なのにすごく音が良いです。 フロントエンドや IF 回路が豪華で位相特性が良いからだと思います。
     
     
   • 刺激のない豊潤な音質です。 特に低音が豊かですが、高音もよく出ています。
     
     
   • 感度もとても良く、デザインや質感と相まって満足度の高いチューナーです。
     
     

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S メータ

• FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。 1〜5 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。
  
  
• これを見ると、S/N 良く受信するためには、フルレベルの必要がありますが、実用的にはレベル4が出ていれば十分使用できます。
  
  
• レベル4の表示レンジ（アンテナ入力範囲）がかなり広いです。
  
  

  アンテナ入力 (dB)	1	2	3	4	5
  〜32	×	×	×	×	×
  33〜37	○	×	×	×	×
  38〜40	○	○	×	×	×
  41〜43	○	○	○	×	×
  44〜57	○	○	○	○	×
  58〜	○	○	○	○	○

  
  

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仕様＆その他

1. Catalog
   
   
2. Schematics
   
   
   • 回路図その1 (1/2), 回路図その1 (2/2)
     
     
   • 回路図その2 (1/2), 回路図その2 (2/2)
     
     
3. 仕様は以下です。
   
   

   項目	仕様
   形式	クォーツロック方式採用 FM 専用チューナ
   受信周波数範囲	76〜90MHz
   実用感度	1.7uV (IHF) 9.8dBf (新 IHF)
   S/N 比	80dB
   実効選択度	60dB (narrow 300kHz)
   高調波歪率	0.06% (stereo wide 1kHz)
   キャプチャーレシオ	0.8dB (wide) 2.0dB (narrow)
   イメージ妨害比	100dB
   IF 妨害比	100dB
   AM 抑圧比	65dB
   ステレオセパレーション	50dB (wide 1kHz)
   周波数特性	20〜17,000Hz -0.5dB
   出力レベル/インピーダンス	1V/100Ω
   付属機構	・ミューティング ・IF バンド切替 (wide/narrow) ・チューニングロック機構 (解除可能) ・エアチェック用テスト信号 ・マルチパス監視用スイッチ ・5個の LED によるシグナルストリングスインジケータ
   アンテナインピーダンス	75Ω不平衡型 300Ω平衡型
   電源電圧	AC100V, 50/60Hz
   定格消費電力（電気用品取締法）	22W
   外形寸法	438(W)×78(H)×322(D)mm
   重量	7kg
   その他
   発売時期	1977年
   定価	96,000円

   
   

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