Nakamichi ST-70

Nakamichi ST-70 をゲット!

2009年6月12日、私のチューナーページのファンから Nakamichi ST-70 の寄贈を受けました。

ST-70 は1986年という比較的年式が新しく、 Schotz Noise Reduction というノイズ低減システム導入が特長の 定価13万円 という高級チューナーです。

早速、程度&動作チェックしました。

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いですが、ゴチャゴチャと配線が多いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. IC を使用して合理化が図られています。


  3. FM フロントエンド

  4. FM IF 部

  5. クォードラチュア検波部

  6. MPX 部

  7. AM 部のフロントエンドは2連バリキャップです。 [LA1247] で全てを構成します。

  8. 使用 IC のロット番号より、この ST-70 は1988年製と判明しました。 電源ケーブルのマーキングは1987年でした。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ボリューム (VR) とテストポイント (TP) の一覧は以下です。 ○は関連回路部を示します。 また写真で [FM フロントエンド] [AM チューナー基板] の調整ポイントを示します。

    VR シルク印刷 FM 受信部 FM MPX 部 Schotz NR 部 AM 受信部
    VR201 VOL L CH      
    VR202 VOL R CH      
    VR301 FM SIGNAL LEVEL      
    VR302 SEEK LEVEL      
    VR303 PILOT CANCEL      
    VR304 76KHz ADJ      
    VR305 SNR HIGH      
    VR306 SNR LOW      
    VR307 VOL AM      
    VR308 AM SIGNAL LEVEL      
    W-L SEPA W L CH      
    W-R SEPA W R CH      
    N-L SEPA N L CH      
    N-R SEPA N R CH      

    TP シルク印刷 FM 受信部 FM MPX 部 Schotz NR 部 AM 受信部
    TP1 (QR NULL)      
    TP2 (QR NULL)      
    TP3 76KHz ADJ      
    TP4 TPL      
    TP5 TPR      
    TP6 L CH
    TP7 R CH
    TP8 SNR LOW      
    TP9 SNR HIGH      

  2. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-70 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - SELECTOR : FM
    FM Mute : OFF
    Mode : Mono
    IF Band : Wide
    Schotz NR : OFF
    - -  
    2 76MHz - 76MHz 受信 L6 V.T 電圧 = 3.0V  
    3 90MHz - 90MHz 受信 TC6 V.T 電圧 = 21.0V  
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 76MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    76MHz 受信 L1
    L2
    L3
    L4
    L5
    D302 左側電圧 = 最大  
    6 90MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    90MHz 受信 TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    TC5
    D302 左側電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 83MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 T1
    T2
    D302 左側電圧 = 最大 IF 調整
    9 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 L305 オーディオ出力 = 高調波歪率最小  
    10 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 L304 TP1〜TP2 間電圧 = 0V ±10mV 以内
    11 - - - - 手順9と10を数回繰り返す クォードラチュア検波調整
    12 83MHz 60dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 VR301 S メータ = ちょうど全点灯 S メータ調整
    13 83MHz 40dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信
    Seek Level : 40dB
    VR302 Seek で電波検出するよう調整 Seek Level 調整
    14 83MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    オーディオ出力ボリューム最大
    VR201 オーディオ出力 = 2.0V オーディオ出力調整 (L)
    15 83MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    オーディオ出力ボリューム最大
    VR202 オーディオ出力 = 2.0V オーディオ出力調整 (R)

  3. FM MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-70 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - SELECTOR : FM
    FM Mute : ON
    Mode : ST
    Schotz NR : OFF
    - -  
    2 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    83MHz 受信
    IF Band : Wide
    VR304 TP3 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    周波数カウンタで測定
    3 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信
    IF Band : Wide
    VR303
    L306
    オーディオ出力電圧 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    4 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R ch. only 1kHz
    83MHz 受信
    IF Band : Wide
    W-R L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 WIDE セパレーション調整 (L)
    5 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : L ch. only 1kHz
    83MHz 受信
    IF Band : Wide
    W-L R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 WIDE セパレーション調整 (R)
    6 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R ch. only 1kHz
    83MHz 受信
    IF Band : Narrow
    N-R L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 NARROW セパレーション調整 (L)
    7 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : L ch. only 1kHz
    83MHz 受信
    IF Band : Narrow
    N-L R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 NARROW セパレーション調整 (R)

  4. Schotz NR の調整

  5. AM 受信部の調整

  6. 調整結果

    1. FM フロントエンドのトラッキングのズレは全くありませんでした。

    2. クォードラチュア検波で若干のズレがあり、歪率が大きく下がりました。

    3. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。

      項目 IF Band L R 単位
      ステレオセパレーション Wide 55 63 dB
      ステレオセパレーション Narrow 52 57 dB
      パイロット信号キャリアリーク Wide -81 -82 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) Wide 0 0 dB



使ってみました

  1. 非常に上品なデザインです

  2. 機能関連

  3. FM の受信性能は素晴らしく良いです。 微弱電波もよく拾います。 十分な高音質です。

  4. AM は十分な感度とそれなりの音質です。



S メータ



仕様