YAMAHA T-2x

YAMAHA T-2x がやってきた

2008年10月10日、私のチューナーページのファンから YAMAHA T-2x のリペアの依頼を受け、ぜひ触ってみたかった機種だったので、特別に受けました。

この T-2x は当時の フラグシップ機 で、 C-2x / B-2x とのペアを組めるようデザインして発売されました。 兄弟機は T-2000 と T-2000W です。

早速、チェックしてみました。

  1. 外観


  2. 動作




ブロック図



カバーを開けてみました

  1. T-2X は T-2000/ T-2000W と兄弟機です。 この3機種はほぼ同じで、基板の部品番号のシルク印刷までピタリ一致します。 以下の僅かな違いがあります。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. T-2x に続くフラグシップ機は5年後の1988年発売の TX-2000 ですが、TX-2000 のほうが回路構成や使用部品が豪華です。 しかし、T-2x でも十分な性能です。 1983年の時点では、全メーカーのシンセサイザーチューナーの中でトップの性能だったはずです。 T-2x/T-2000W/T-2000 を除くと、1983年発売の高性能シンセサイザーチューナーは TRiO KT-1010 くらいしかなく、KENWOOD KT-3030/KT-2020 が出現するのは1984年です。 従って、当時の YAMAHA はチューナーの分野でも高度な技術力を誇っていたはずです。

  3. 各部ネジには銅メッキされた鉄ネジを使用しています。 これがどの程度音質に貢献するのか疑問です。

  4. 電源トランスは安物臭くて小さいですが、これでも十分なのかもしれません。

  5. FM フロントエンドは専用基板になっており、大きく立派です。 5連バリキャップ方式です。 [ダブル同調]→[Dual Gate FET]→[ダブル同調]→[バランスドミクサ]←[OSC 同調] の豪華な構成です。 同調回路はトラッキング調整できる構成です。 RF アッテネータ回路(というよりゲイン調節回路)が組み込まれており、[RF ATT] ボタン ON で RF 段の [Dual Gate FET] のバイアスを変えてゲインを落とします。

  6. FM IF 部は LOCAL / DX に切換できます。 LOCAL / DX は通常のチューナーの WIDE / NARROW に相当します。


  7. FM 検波部は 広帯域レシオ検波で、検波歪を補正する回路が組み込まれています。

  8. FM MPX 部はディスクリート構成で豪華です。 SANYO LA3380 という MPX IC を使用していますが、この IC のステレオ分離回路を使っている訳ではなく、MPX スイッチング信号抽出だけに使っています。 パイロットキャンセラー回路は実装されています。 セパレーション調整は左右別々に調整できます。

  9. AM 受信部は SANYO LA1245 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。

  10. 使っている部品のロット番号より、本機は1983年製造品と判りました。



リペア

  1. レシオ検波の NUL 調整をしても数分で大きく狂ってしまうことが判りました。 この結果、どうしても音に揺れを感じ、しかも歪っぽいのです。

  2. 全操作ボタンが動作不良だったので、タクトスイッチ全数交換しました。 全部で22個ありましたから、かなりの手間がかかりました。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

  2. FM フロントエンドの調整

  3. FM レシオ検波部の調整

  4. IF 部の調整

  5. FM MPX 部の調整

  6. FM シグナルメータの調整

  7. FM CSL 調整

  8. AM 部の調整

  9. 再調整結果



使ってみました



レベルメータ



仕様