SANSUI TU-D607

SANSUI TU-D607 が到着

2022年7月7日の七夕に熊本市の M さんより SANSUI TU-D607 の修理依頼品が到着しました。

Quartz Lock バリコンチューナ です。

今回はバリコン機構部に不具合があり、私では直せないので、修理は途中でギブアップしました。 一応、[Quartz Locked] [FM Stereo] ランプが点灯して受信できるようにはなっています。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 電源 ON してチェック



TU-D607 と輸出版の TU-719

  1. TU-D607 の輸出版は TU-719 と言われますが ・・・

  2. TU-D607 と TU-719 の違い

  3. 以上の違いはありますが非常によく似た兄弟機種なので、TU-719 のドキュメントは TU-D607 でも十分参考になります。



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

     

  2. FM フロントエンド

  3. FM IF 部

  4. FM 検波部

  5. MPX 部

  6. AM 受信部

  7. 総合して



Quartz Lock 方式には2種類ある

  1. 2種類の Quartz Lock 方式

    1. 放送局検知型 Quartz Lock 方式 ・・・ 放送局を検知してから Quartz Lock

      • Quartz Lock OFF の状態で、通常のバリコン式チューナと同様に放送局に同調します。

      • 放送局を検知して同調する (同調点検出) と Quartz Lock 回路が動作開始し Lock ON します。

      • [放送局検知]→[Quartz Lock ON] となるため、Quartz Lock 回路の論理は非常に複雑になります。

      • 逆に言うと、この方式のバリコン式チューナは通常のバリコン式チューナに非常に近いと言えます。

    2. 常時 Quartz Lock 方式 ・・・ 放送局検知に関係なく常に Quartz Lock

      • バリコン容量 (回転角) をベースに常に 0.1MHz 単位の OSC 発振を行います。

      • このため、放送局検知の有無に関わらず常に Quartz Lock しています。

      • 放送局検知は関係ないため、Quartz Lock 回路は非常にシンプルになります。

      • 逆に言うと、この方式のバリコン式チューナはシンセサイザチューナに非常に近いと言えます。

      • 今回再調整した TU-D607 はこちらの仲間です。

  2. その効果は?

  3. どちらに軍配が上がるか?

  4. [放送局検知型 Quartz Lock 方式] のチューナの例

  5. [常時 Quartz Lock 方式] のチューナの例



リペア

  1. FM/AM とも受信できない

  2. FM で +4MHz ほどの周波数ズレがある

  3. 本格再調整で問題発生!

  4. 交換した部品の記録



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

  2. 電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値 判定 備考
    電源基板 [13] -12V -10.7V  
    電源基板 [14] +26V +20.6V  
    電源基板 [15] +12V +12.2V +12V 電源修理後の電圧
    電源基板 [21] +5V +4.97V  

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TU-D607 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - Selector : FM mono
    Muting : off
    Noise Canceler : off
    - -  
    2 - [デジタル基板] TR15 コレクタを電線で GND と接続する Quartz Lock 阻止
    3 - - デジタル基板
    VR03
    [45]〜GND 間電圧 = 7±0.2V AFC Bias 調整
    4 - ダイヤル指針を 83.0MHz に合わせる OSC トラッキング調整
    5 - - TCa4 デジタル周波数表示 = 83.0MHz
    6 - 手順2の電線を取り外す Quartz Lock 回復
    7 83MHz
    40dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 TCa1
    TCa2
    TCa3
    [46]〜GND 間電圧 = 最大
    (FM S-meter)
    RF トラッキング調整
    8 IFT01
    T01
    IF 調整
    9 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    T03 オーディオ出力 = 高調波歪率最小 クォードラチュア検波調整
    10 T02 [41]〜[42] 間電圧 = 0±0.2V
    11 手順9と10を数回繰り返す
    12 83MHz
    60dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 デジタル基板
    VR01
    S メータ = ちょうどフル S メータ調整
    13 - Selector : FM auto
    Muting : off
    Noise Canceler : off
    - -  
    14 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信 VR04 下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    15 VR05 オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    16 IFT01
    T01
    VR02
    VR07
    VR08
    オーディオ出力 = 高調波歪率最小 IF 歪補正 (stereo)
    17 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    オーディオ基板
    VR01
    L/R ch. オーディオ出力 = 最小 ステレオセパレーション調整
    18 83MHz
    15dB
    stereo 1kHz L+R
    VR03 [STEREO] ランプ = ちょうど点灯 Muting レベル調整

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TU-D607 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - Selector : AM
    Muting : off
    - -  
    2 - ダイヤル指針を 600kHz に合わせる OSC トラッキング調整
    3 - - T04 デジタル周波数表示 = 600kHz
    4 - ダイヤル指針を 1400kHz に合わせる
    5 - - TC02 デジタル周波数表示 = 1400kHz
    6 手順2〜5を数回繰り返す
    7 600kHz
    40dB
    1kHz
    600kHz 受信 L702
    (バーアンテナ)
    [13]〜GND 間電圧 = 最大
    (AM S-meter)
    RF トラッキング調整
    8 1400kHz
    40dB
    1kHz
    1400kHz 受信 TC01
    9 手順7と8を数回繰り返す
    10 1000kHz
    40dB
    1kHz
    1000kHz 受信 T05 [13]〜GND 間電圧 = 最大
    (AM S-meter)
    IF 調整
    11 1000kHz
    80dB
    1kHz
    デジタル基板
    VR02
    S メータ = ちょうどフル S メータ調整
    12 AF OSC から [13] へ 9kHz 5mV を注入 LC02 オーディオ出力 = 9kHz 成分最小 9kHz ノッチフィルタ調整

  5. 調整結果



使ってみました

  1. デザイン

  2. リアパネル

  3. 感度や音質



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様

    FM チューナ部
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    実用感度 mono : 9.6dBf
    stereo : 16.5dBf
    50dB クワイティング感度 mono : 13.5dBf
    stereo : 35.5dBf
    S/N 比 mono : 81dB
    stereo : 78dB
    歪率 (IHF 65dBf stereo) 100Hz : 0.1%
    1kHz : 0.07%
    6kHz : 0.1%
    キャプチャーレシオ 1.0dB
    選択度 (IHF) 60dB (400kHz)
    スプリアス妨害比 (IHF) 85dB (83MHz)
    イメージ妨害比 (IHF) 80dB (83MHz)
    IF 妨害比 (IHF 平衡) 90dB (83MHz)
    RF 相互変調 (IHF) 65dB (83MHz)
    AM 抑圧比 (IHF) 60dB
    ステレオセパレーション (1kHz) 50dB
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡 / 300Ω平衡
    AM チューナ部
    受信周波数範囲 520〜1650kHz
    実用感度 (IHF バーアンテナ) 47dB/m (220uV/m)
    選択度 (±9kHz) 33dB
    S/N 比 50dB
    歪率 (30% 変調 80dB/m) 0.35%
    イメージ妨害比 (IHF) 50dB (1000kHz)
    IF 妨害比 35dB (1000kHz)
    総合
    可変出力電圧/インピーダンス 0〜775mV/2.5kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 (電気用品取締法) 20W
    外形寸法 430(W)×168(H)×405(D)mm
    482(W)×168(H)×419(D)mm (ラックマウントアダプタ装着時)
    重量 8.8kg
    9.3kg (ラックマウントアダプタ装着時)
    その他
    別売ラックマウントアダプタ BX-7 1組 3,000円
    発売時期 1978年
    定価 49,800円